ITを活用した内部統制強化とは?リスク低減と業務効率化の実現方法を解説

 クラウドERP導入ガイド編集部

企業が持続的な成長を目指す上で、リスク管理やコンプライアンスの重要性はますます高まっています。不正防止や法規制遵守の観点から、内部統制の強化は経営層や内部監査部門にとって避けて通れない課題です。しかし、「どこから手をつけるべきか」「効果的な手法は何か」と頭を悩ませるケースも多いでしょう。そこでカギとなるのが、ITの活用です。RPAやAI、ERPなどの先進技術を取り入れることで、業務効率を大幅に向上させると同時に、ヒューマンエラーや不正行為のリスクを減らすことができます。本記事では、具体的なIT活用の方法をわかりやすく解説。IT活用による業務効率化の実現方法も紹介しながら、企業が直面する問題を解決し、業務効率を大幅に向上させる道筋を提示します。内部統制の強化を図り、安心して成長を続けるためのヒントを掴んでください。

内部統制強化の重要性とIT活用の背景

内部統制とは、会社を正しく運営するための欠かせないルールのことです。内部統制を有効に活用させるためにITを有効かつ効率的に使うことで機能されるのですが、なぜITを活用する必要があるのでしょうか。内部統制の目的と併せて紹介していきます。

内部統制強化の目的

内部統制を強化する目的は、企業がより健全かつ持続的な成長を実現するためです。具体的には、以下の点が挙げられます。

  • 業務の有効性および効率性:内部統制を整備することで、業務プロセスが明確になり、無駄な作業が削減されます。これにより、業務の効率化が図られ、生産性が向上します
  • 財務報告の信頼性:財務諸表に虚偽の記載がないことを確認することを言います。
  • 法令遵守の徹底:企業は、様々な法令や規制を遵守する義務があります。内部統制を強化することで、法令違反のリスクを低減し、行政処分や訴訟などの法的リスクから企業を守ることができます
  • 資産の保全:資金、情報、人材、ノウハウ、取引先といった事業活動に欠かせないリソースを取得や使用及び正式な手続きと承認の下に資産の保全をすることを言います。
    内部統制の強化は、一朝一夕に達成できるものではありません。継続的な見直しと改善が求められます。また、内部統制は、単にルールを定めるだけではなく、従業員一人ひとりが意識を持ち、行動することが重要です。企業の規模や業種を問わず、全ての企業にとって不可欠なものと言えるでしょう。

なぜITを活用する必要があるのか?

企業を取り巻く環境はますます複雑化し、内部統制の強化が求められているのですが、なぜITを活用する必要があるのでしょうか。IT技術を活用して実現されるシステム「ERP」の導入が内部強化に有効であることを踏まえながら、3つの理由を解説していきます。

業務効率をアップさせるため

ITを活用することで、日々の業務を効率化し、生産性を向上させることができます。特にERPは、各部門で発生するデータを一元管理し、リアルタイムで情報を共有できる点が強みです。これにより、在庫、販売、会計の業務がスムーズに繋がり、人手による作業やデータの二重入力の負担を大幅に減らせます。また、各プロセスの自動化により、時間やリソースを節約できるだけでなく、正確性も向上します。
こうした業務効率の改善は、企業全体の競争力を高めるカギとなります。ITの活用は単なる効率化手段にとどまらず、変化の激しい市場環境に柔軟に対応するための基盤とも言えるでしょう。

誤操作するリスクをなくすため

ITシステムの導入は、ヒューマンエラーによるリスクを最小限に抑える効果もあります。例えば、手作業で行う場合、記録ミスや計算間違い、入力漏れといったエラーが発生しやすいですが、ERPを導入することで自動化されたワークフローを構築でき、これらのリスクを効果的に減らすことができます。
また、システム内で設定されたルールに従い業務を進めるため、不正確なデータが入り込む可能性を阻止します。さらに、エラーが発生した場合でも迅速に検知できる仕組みが整備されるため、問題が広範囲に行き渡る前に対処できるのです。
このように、ITを活用することで、業務の正確性を高め、トラブル発生時の迅速な対応が可能となり、結果として組織全体の信頼度が向上します。

権限を適切に設定するため

ITシステムを活用することで、業務権限の適切な設定と管理が可能になります。ERPでは、ユーザーごとに細かく権限を設定できるため、データや機能へのアクセスを業務上必要な範囲に限定できます。特に、ベンチャー企業ではシステム導入時に管理者権限を全員に割り振ってしまう、という事態も起こりえることです。
不正な情報閲覧や意図しない操作が発生するリスクを減らし、内部統制を強化する重要なことでもあるのです。
さらに、アクセスログの記録や監視機能により、業務履歴を透明化し、不正や問題の早期発見にも繋がります。特に企業が成長し、組織が複雑化する中で、このような権限管理の仕組みは重要性を増しています。ITの導入により、適切な権限管理と運用プロセスを実現することで、業務の安全性と効率性の両立を図ることが可能となるのです。

IT活用によるリスク低減の具体的な手法

ITを活用すると、情報漏洩や不正アクセスといった様々なリスクが発生してしまいます。ここでは、リスクを最小限に食い止めるための具体的な方法を5つ紹介していきます。

自動化による人的エラーの防止

ITの活用において自動化は、人的エラーを防ぐ最も効果的な手段の一つです。
手作業での業務は、入力ミスや計算間違い、処理の抜け漏れといったエラーが発生しやすく、特に毎日おこなう業務では集中力の低下が問題になります。
しかし、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やERPなどを導入し業務を自動化することで、こうしたエラーを大幅に削減できます。例えば、会計処理では自動計算機能を使用することで複雑な計算の間違いを防ぎ、在庫管理では自動更新機能で数量不足や重複注文を回避できます。さらに、自動化は単にエラーを防ぐだけでなく、タスク完了までの速度も向上させます。特に、トランザクション処理やデータ入力を自動化することで、人による入力ミスなどを防ぎ、正確なデータに基づいた業務が可能となります。

データ暗号化とアクセス管理

ITの活用において、データの保護はリスク低減の重要な側面です。
データ暗号化を行うことで、不正アクセスや情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができます。暗号化技術を使用すれば、データが送信中や保存中に盗まれた場合でも内容が解読されず、情報の機密性が保たれます。
一方、アクセス管理は誰がどの情報にアクセスできるかを制限することで、内部からの不正やミスを防ぐ手段です。特に、ERPシステムではユーザーごとに権限を細かく設定し、不要なデータへのアクセスを防ぐ仕組みが標準機能として備わっています。さらに、2段階認証やバイオメトリクス認証を組み合わせることで、セキュリティを強化できます。これらの対策は、組織全体の情報セキュリティを確保するための基本的かつ効果的な手法です。新しいビジネスモデルやITシステムの導入は、新たなセキュリティリスクをもたらす可能性があるため、注意が必要するようにしましょう。

コンプライアンスチェックの自動化

法律や規制への適合性を確保するコンプライアンス活動は、企業にとって不可欠な業務です。
ITの活用により、このプロセスを自動化することで効率性と正確性を大幅に向上させることが可能です。
例えば、ERPやGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ツールを利用することで、会計基準や業界規制に沿った業務プロセスが自動的に監視され、不適合が検知されると警告が出されます。さらに、自動化されたチェックリストやリマインダーにより、定期的な監査が漏れるリスクも回避できます。こうしたツールは、複数の規制を同時に管理する際にも威力を発揮し、負担を軽減するとともに、企業がコンプライアンス違反による法的リスクを回避するための重要な手段となります。

バックアップと災害復旧システムの強化

ITを活用したバックアップおよび災害復旧は、事業継続の観点から不可欠です。
データ消失やシステム停止は、企業に多大な損失をもたらすリスクがありますが、定期的なバックアップを自動化することでこれを防ぐことが可能です。さらに、クラウドを活用したバックアップは、物理的な災害が発生した場合でも安全な場所にデータが保存されているため、迅速な復旧が可能です。災害復旧システムは、システム障害発生時に、自動的に代替システムに切り替えることで、ビジネスの停止時間を最小限に抑えます。しかし、低コストの災害復旧ソリューションは、大規模な自然災害などに対応できない可能性があります。リスク許容度とコストをバランスよく検討することが重要です。

内部監査のIT化(監査ツール)

ITを活用した内部監査は、従来の紙ベースや手作業の監査に比べ、効率性と正確性が格段に向上します。専用の監査ツールを導入することで、各種データの収集、分析、報告を自動化できるため、監査プロセスにかかる時間を短縮できます。
また、デジタル化された監査記録は、情報が一元管理されるためトレースが容易で、不正やミスを迅速に特定することが可能です。さらに、ERPやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールと連携させることで、業務データをリアルタイムに監視し、異常値や不正行為の兆候を早期に検出することもできます。
ITを活用することで、監査の精度が向上し、内部統制の脆弱性がより早期に発見できるようになります。これにより、不正や誤りを未然に防ぎ、企業全体の信頼性を高めることができるのです。

IT活用による業務効率化の具体的な手法

現在も、多くの国内企業が業務効率化を目的に様々なITシステムを活用しています。
特に近年、多くの企業が、IoTやAIといった先端技術を活用し、業務の自動化やデータ分析の高度化を実現。業務効率の向上を目指しています。現に、大企業から中小企業、製造業まで幅広く活用されています。

IT活用による業務効率化の具体的な手法
出典引用:環境省【財務局調査による「先端技術(IoT、AI等)の活用状況」について】
では、IT活用による業務効率化の具体的な方法は何があるのか。6つの方法を解説していきます。

RPAによる業務の自動化

RPAは、定型業務の自動化を可能にするソフトウェアロボット技術であり、業務プロセスの効率化に貢献します。データ入力や請求書処理、メールの振り分けなど、手作業だと時間がかかりミスが発生しやすい業務を自動化できるため、作業効率が大幅に向上させてくれます。また、人間が対応しなくても済むため、より付加価値の高い業務や他におこなわなければいいけない業務に専念できるようになります。さらに、RPAは既存の業務プロセスやシステムを大幅に変更する必要がない点も魅力で、導入コストが比較的低く抑えられるのもメリットです。RPAは企業の生産性向上と競争力強化の有力なツールと言えるでしょう。

業務管理ツールの活用

企業は、日々多くのタスクを抱え、限られたリソースの中で最大限の成果を出さなければなりません。このような状況下で、業務管理ツールは、プロジェクトの進捗を可視化し、チーム全体の効率性を向上させるために欠かせない存在となっています。プロジェクトの計画、タスクの割り当て、進捗状況の追跡、そしてチームメンバー間のコミュニケーションを円滑にするための機能を備わっているため、複雑なプロジェクト管理をシンプルかつ効果的におこなうことができます。
近年では、クラウド型の業務管理ツールが主流となっており、場所や時間にとらわれずに、どこからでもアクセスして作業を行うことが可能です。また、多くのツールがモバイルアプリに対応しており、スマートフォンやタブレットからも手軽に利用できます。業務管理ツールの導入は、企業の成長を加速させるための重要な投資です。ぜひ、自社の業務に合ったツールを導入し、業務効率化を図ってみましょう。

AI(人工知能)によるデータ分析と予測

AIは大量のデータを迅速かつ正確に処理し、パターンを発見したり将来の動向を予測したりする能力を持っています。これにより、経営判断や市場戦略の策定がデータドリブンで行えるようになり、精度が向上します。例えば、販売データをAIで分析することで、消費者の需要を予測し、適切な在庫管理やマーケティング施策を実行できます。また、AIは従来の方法では難しかった異常検知にも優れ、リスク管理にも役立ちます。
AIのデータ分析は、ビジネスの意思決定を迅速かつ的確に行うための強力なサポートツールとなっているのです。

モバイルアプリケーションの導入

モバイルアプリの活用は、働く場所や時間の制約を大幅に減らし、業務効率を向上させる手段として重要です。例えば、クラウドベースのアプリを利用すれば、オフィス外でも簡単にデータやドキュメントにアクセスし、タスクを実行できます。営業担当者が外出先から情報をリアルタイムで更新できるようになれば、業務のスピード感が増し、顧客対応も迅速になります。また、通知機能を活用することで重要なタスクを忘れるリスクも軽減されます。
更に、Microsoft Teamsなどではコミュニケーションの手段として活用もできます。いつでもどこでも連絡が取れる環境が整うことで、タイムリーな対応が可能となり、業務の遅延を防ぎます。
こうしたモバイルアプリの導入により、柔軟で効率的な働き方が実現できるのです。

カスタマーサポートの自動化

チャットボットやAIを活用したカスタマーサポートの自動化は、顧客対応のスピードと効率を大幅に向上させます。FAQへの自動応答や、顧客の問い合わせ内容に基づいた適切な案内は、24時間体制で提供可能です。これにより、顧客満足度を高めつつ、人間のサポートスタッフはより複雑な問題解決に注力できます。さらに、AIは過去の問い合わせデータを分析し、顧客のニーズを予測することで、より的確なサービス提供を可能にします。自動化されたサポートは、コスト削減と顧客体験の向上を両立する効果的な方法の一つです。

AIによる文書管理と自動分類

AIを活用した文書管理と自動分類は、膨大なデータの整理を効率化します。
AIは文書の内容を解析し、カテゴリーごとに自動分類するだけでなく、検索性を大幅に向上させます。例えば、契約書や請求書をキーワードや内容に基づいて自動で整理すれば、必要な情報を迅速に見つけることが可能です。また、誤分類や手動での作業ミスも減少し、業務の正確性が向上します。AIが重複ファイルや古いファイルを自動的に識別し、削除することで、ストレージ容量の無駄をなくします。
AIを活用した文書管理は、企業の情報資産を最大限に活用し、業務の生産性を高めるための強力なツールと言えるでしょう。

まとめ

内部統制は企業の健全な成長に不可欠です。ITを活用することで、業務効率化、ヒューマンエラーの防止、権限管理の強化を実現し、内部統制をより強化することができます。RPAやERPなどの導入により、自動化とデータの一元管理が可能になり、更に業務の精度とスピードが向上し、新たなビジネスチャンスの発見にも繋がります。ITの活用は、単なる業務効率化だけでなく、企業の競争力強化と持続的な成長を支える基盤となります。ITを活用した内部統制強化をまだ導入していない企業は、この記事から学んでいただき、すぐに実践してみることをおすすめします。

この記事を書いた人
クラウドERP導入ガイド編集部
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