SAP ECCとは?特徴とS/4HANAへの移行ポイント

 クラウドERP導入ガイド編集部

SAP ECCは長年にわたり、多くの企業が採用するERPシステムとして機能してきました。しかし、技術が進化し、現在では次世代ERPシステムであるSAP S/4 HANAへの移行が推奨されています。SAP S/4 HANAは、SAP ECCと比べて高速なデータ処理能力とリアルタイムの分析機能を提供するソリューションです。この記事では、SAP ECCとSAP S/4 HANAの違いや、移行する際のポイントについて詳しく解説します。

1. SAP ECCとは

まず、従来のERPシステムであるSAP ECCについて簡単に整理します。

SAP ECCの概要

SAP ECCとは、SAP ERP Central Componentの略称で、SAP社が提供するERPソフトウェアを指します。SAP ECCは1990年代後半から2000年代初頭にかけて普及し、これまで世界のさまざまな企業で利用されてきました。

財務、物流、人事、製造、販売を含む広範なビジネスプロセスをサポートするソリューションであり、SAPによる業務プロセスの標準化や最適化、データの一元化などが進められました。SAP ECCは、自社でサーバーやデータセンターを用意するオンプレミス型で導入されるのが一般的です。

SAP ECCのサポート期限

SAP ECCは、間もなく製品のEOL(End of Life)を迎えます。バージョン6.0のSAP ECCを利用している場合、2027年末にサポートが終了します。サポート終了によって多くの企業に影響が出ることから「SAP2027年問題」と呼ばれることもあります。

当初、本サポート期限は2025年までとされていましたが、SAP社により2年延長されました。そのため、これ以上の延長は考えにくいでしょう。SAP ECCを継続利用している企業は、他システムへの移行を検討する必要があります。

2. SAP ECCとSAP S/4 HANAの違い・メリット

SAP ECCからの移行先として推奨されているのがSAP S/4 HANAです。ここでは、SAP S/4 HANAの概要や、SAP ECCと比較した際のメリットについて紹介します。

SAP S/4 HANAとは

SAP S/4 HANAとは、SAP社によって開発された次世代のERPソフトウェアです。操作性に優れる「SAP Fioriユーザーインターフェース」が採用されており、直感的で使いやすい画面デザインとなっています。

また、データ分析も強化され、企業の意思決定を支援するためのリアルタイムなデータ分析とレポート作成が可能です。さらに、高度なセキュリティ機能を備えており、データ保護とコンプライアンスを強化できます。

ECCと比較した際のS/4 HANAのメリット

ECCと比較して、最新のテクノロジーが利用されているS/4 HANAには以下のようなメリットがあります。

インメモリDBによる高速データ処理

SAP S/4 HANAには、製品の名称にもなっているメモリ・カラム型の超高速データベースシステム「SAP HANA」が採用されています。SAP HANAにより、全社横断で大量のデータを扱うSAPシステムにおいても、リアルタイムで高速なデータ処理が可能です。

クラウド・オンプレの選択が可能

オンプレミスでの導入だけではなく「SAP S/4HANA Cloud」としてクラウド環境も利用可能です。自社で環境を用意することが難しい中堅・中小企業にとっても有力な選択肢となります。また、企業のニーズに応じてハイブリッドクラウドソリューションもサポートしています。 特にクラウド環境への移行により、初期費用を抑えTCO(Total Cost of Ownership)の削減も期待できます。

クラウド移行による最新のイノベーションの享受

SAP S/4HANA Cloudへの移行を行うことで、常に最新バージョンのERPを利用可能になります。SAPでは毎年売上の18%を開発投資しており、その額は2023年度で約8,500億にものぼります。クラウド型ERPを採用することで、これらの投資を反映した拡張機能を自動的に利用できる仕組みが備わっています。
特にSAPでは、昨今AI領域の投資を進めており、各プロセスにおいて自然言語で操作可能なAIシナリオの導入が進められています。このように、新しいテクノロジーやイノベーションをいち早く活用することが可能です。

3. SAP ECCユーザーがSAP S/4 HANAへ移行する際のポイント

ここまでご紹介したとおり、サポート期限の満了が近いSAP ECCを利用している企業は、SAP S/4 HANAへの移行を検討する必要があります。移行におけるポイントは以下のとおりです。

移行時のポイント①:業務のさらなるシンプル化

SAP導入のメリットは「業務プロセスを業界標準に合わせて最適化できる」ことです。SAP ECCの導入から時間が経っているため、改めて業務プロセスの見直しを行いましょう。これまでに追加された新たな業務や業務手順・実施方法の変化などを踏まえ、SAP S/4 HANAでどのように業務を最適化できるのか、検討してみてください。

移行時のポイント②:データ活用施策の検討

高速にデータを登録・抽出できるSAP S/4 HANAは、データ分析基盤として有効な製品です。SAPには製造、販売から財務まですべてのデータがそろっているため、データドリブン経営の実践やDXの推進など、さまざまなユースケースに対応できます。

移行時のポイント③:移行方法の選択

SAP S/4 HANAへの移行方法として、大きく3つの選択肢があります。

  • ブラウンフィールド:利用中のSAP ECCの設定、アドオン、データをそのままSAP S/4 HANAへ移行する方式
  • グリーンフィールド:現行のシステムにとらわれず、ゼロベースで新しいシステムとして再構築する方式
  • 選択データ移行:固有の移行要件がある場合、個別に対応を行う方式

新たに業務プロセスを見直す場合や既存アドオンの削減を行う場合、新規構築となるグリーンフィールドが適しています。このような個別の要件がない場合は、コストが安く、短期間で移行できるブラウンフィールドが最適です。一からすべて再構築する必要はないものの、一部領域において企業固有の要件がある場合は、選択データ移行を選択するとよいでしょう。

4. まとめ

この記事では、SAP ECCについての概要とサポート期限、SAP S/4 HANA移行におけるポイントについてご紹介しました。製品EOLの近いSAP ECCは、今後SAP S/4 HANAをはじめとした後継製品へと移行していく必要があります。移行においては、本記事でご紹介したポイントを押さえるほか、専門知識を持ったプロフェッショナルのサポートを受けることも重要です。

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