データドリブン経営とは?データを活用して競争力を高める方法

 クラウドERP導入ガイド編集部

現代のビジネス環境では、直感や経験に頼らず、客観的なデータに基づいて意思決定を行うことが求められます。特にデジタル化が進む中では、正確なデータ収集と分析を行い、それを戦略に反映することが重要です。

データドリブン経営とは?

データドリブン経営とは、「データを基にした経営」を指します。従来の勘や経験に頼った意思決定ではなく、日々蓄積される膨大なデータを分析し、その結果を活用して、戦略や方針を決定する手法です。迅速で的確な判断が可能となり、特に経験の浅い経営者や管理者でも適切な意思決定を行いやすくなります。

例えば、顧客の購買履歴や市場トレンドのデータを活用することで、今後の販売計画や新商品の開発に役立てられます。データを効果的に活用することで競争力を高められるのが、データドリブン経営の特徴です。また、変化の激しい市場環境でも柔軟に対応できるため、多くの企業で注目されています。

データドリブン経営が注目されるようになった背景

データドリブン経営が注目を集めるようになった背景には、現代のビジネス環境や技術の進化が大きく関係しています。消費者の行動パターンがこれまで以上に多様化し、テクノロジーの進歩によってデータ活用の可能性が拡大した結果、多くの企業がデータに基づく経営を取り入れる必要性を感じ始めました。

消費者行動が多様化・複雑化している

かつては、ある程度のパターン化された行動が予測可能でしたが、インターネットやスマートフォンの普及により、消費者のニーズや行動が多様化し、さらに複雑化しています。このような環境下では、従来の経験や勘だけでは顧客ニーズを正確に捉えることが困難です。

また、消費者行動の多様化は、企業の業務にも影響を与えています。商品の選択肢が増えたことで競争が激化し、マーケティングや販売方法も柔軟に対応する必要性が増しました。この課題に対応するために、データを活用して市場や顧客の動向を把握し、最適な商品やサービスを提供することが求められるようになっています。

テクノロジーが進歩している

データドリブン経営が求められる背景には、テクノロジーの進歩も挙げられます。特に、データ収集や分析を行う技術の発展により、これまで以上にデータの活用がしやすくなりました。例えば、AIやIoT(モノのインターネット)の技術を活用することで、実店舗での顧客の行動もデータ化が可能です。

技術の進化はビジネスの変化スピードも加速させています。新しいトレンドや顧客ニーズが生まれるスピードが増し、それに対応するためには迅速で柔軟な意思決定が必要です。こうした環境において、データを活用する経営手法は、変化に対応するための手段として注目されています。

データドリブン経営はDX実現の手段

データドリブン経営は、企業がDXを実現するための手段のひとつでもあります。DXとは、データやデジタル技術を活用して、企業全体の業務や価値創造プロセスを根本から変革することを指します。その目的は業務の効率化や新たな価値創出を通じて競争力を高めることです。

DXには「守りのDX」と「攻めのDX」の2つのアプローチがあり、データドリブン経営は特に「守りのDX」の一環として位置づけられます。守りのDXでは、既存の業務プロセスを効率化するとともに、経営リスクを早期に発見、軽減することが目標です。

2025年のデータドリブン経営予想

マッキンゼーが2022年に発表した「The data-driven enterprise of 2025」では、データドリブン型企業の未来について詳細な分析が行われており、その中で2025年におけるデータドリブン経営の7つの特徴が示されました。

2025年のデータドリブン型企業の7つの特徴

1.あらゆる意思決定、対話、プロセスに埋め込まれたデータ
データは企業活動のあらゆる場面に統合され、日常業務や会話の中で活用されます。この一体化により、効率的で迅速な判断が可能になります。

2.データをリアルタイムに処理し、配信する
データは収集から分析、活用までがリアルタイムで行われるため、最新の情報を基にした意思決定が可能です。これにより、変化の激しい市場でも柔軟に対応できるようになります。

3.柔軟なデータストアにより、統合され、すぐに使えるデータを実現
企業内のデータは統一的に管理され、必要なときにすぐ活用できる状態に整備されます。この仕組みにより、データの活用範囲が広がります。

4.データを製品のように扱うデータ運用モデル
データは単なる資源ではなく、明確な価値を持つ「製品」として扱われます。この考え方は、データの品質向上と価値最大化につながります。

5.価値を生み出すために、最高データ責任者(CDO)の役割は拡大する
データ活用の重要性が高まる中、CDO(Chief Data Officer)がリーダーシップを発揮し、データを戦略的に活用するための体制を整備します。

6.データエコシステムのメンバーシップが主流に
企業間でのデータ共有や協力が進んでエコシステム全体としての価値が高まり、新たな市場やサービスが生まれる可能性があります。

7.プライバシー、セキュリティ、レジリエンスを考慮したデータ管理の優先順位づけと自動化
データを扱う際には、セキュリティやプライバシー保護が重要視されます。同時に、これらを効率的に復元、管理するために自動化が進むとされています。

これらの特徴から、2025年にはデータドリブン経営がさらなる進化を遂げ、企業の競争力を決定づける要素となることが予想されます。企業は今から準備を進め、データを基軸とした経営モデルの導入を進めることが重要です。

参照元:The data-driven enterprise of 2025|McKinsey
https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/the-data-driven-enterprise-of-2025

データドリブン経営のメリット

データドリブン経営は、企業が収集したデータを活用することで、さまざまな効果を期待できます。迅速な意思決定や顧客ニーズの正確な把握、業務効率の向上、自社の強みや課題の明確化がその代表的な例です。

適切かつ迅速に意思決定できる

市場の変化が激しく、競争が激化する現代において、スピード感を持って正しい判断を下すことは、企業にとって欠かせない要素です。リアルタイムで得られるデータを分析することで、状況に応じた合理的で客観的な選択ができます。例えば、顧客の購買データを分析することで、需要が高まるタイミングを予測し、在庫調整や販売戦略を迅速に対応させることが可能です。

顧客のニーズを把握できる

蓄積したデータを活用することで、顧客の嗜好や行動を深く理解し、正確にニーズを把握できます。これにより、顧客のニーズに沿った適切な対応が取れるようになります。

例えば、過去の購入履歴やWebサイトの閲覧データを分析すれば、どの商品やサービスが顧客の関心を引いているかが明確になります。この情報をもとに商品ラインナップの最適化や新しいサービスの提案を行うことで、顧客満足度を高め、信頼関係を構築することが可能です。

生産性を向上できる

業務プロセスをデータに基づいて最適化することで、余分なコストや時間の浪費を防ぎ、より効率的な運営が実現します。オンラインツールや自動化技術を取り入れることで、従業員の負担軽減と成果の最大化を同時に目指せます。例えば、在庫管理や人員配置の最適化にデータを活用すれば、手作業での確認や個別調整といった不要な手間を削減し、業務全体のスピードアップが図れます。また、このような効率化は、柔軟な働き方を実現し、多様な人材を引きつけます。その結果、企業に新たな視点やスキルがもたらされ、企業全体の競争力向上にも貢献します。

データから強みや課題を見つけられる

これまでは、担当者の経験や勘に頼る場面が多かったことでも、データを活用することで、従来は見逃されていたポイントも明らかになります。例えば商社のように物を取り扱う業態の場合、売上データの分析からは、特定の地域や顧客層で成功している商品を特定できる場合があります。

一方で、売れ行きが伸び悩むなどの問題が発生している分野についても、データによる詳細な原因分析が可能です。こうした取り組みによって、自社の成長を後押しする具体的な施策を見出すことができます。

データドリブン経営のデメリット

データドリブン経営には多くのメリットがある一方で、実現にはいくつかの課題が伴います。IT人材の採用や育成、コスト管理、データ基盤の整備など、各課題を一つひとつ解決することで、効果的な経営を実現できます。

IT人材の確保が必要になる

データドリブン経営を実現するには、データの収集や分析、運用を行うには専門知識が必要であり、これを担う人材の確保が課題です。しかし、日本国内ではIT人材が慢性的に不足しており、多くの企業が採用に苦戦しています。特に中小企業においては、給与水準やキャリアアップの機会などを理由に大企業と比べて人材獲得の競争が厳しいため、この問題がさらに深刻化しています。

コストがかかる

データドリブン経営を導入する際には、初期費用や運用コストがかかります。例えば、データを蓄積・分析するためのシステムを構築する費用や、それを安全に運用するためのセキュリティ対策費用が挙げられます。これらのコストは、企業規模や導入範囲によって異なりますが、中長期的には大きな負担となるケースが多いです。

また、システムを維持するための運用費も継続的に発生します。収益を向上させるためにはこれらの投資が必要ですが、費用対効果を慎重に検討しなければなりません。特に中小企業の場合は、限られた予算の中で運用方法とコストの適切なバランスを取ることが求められます。

データの収集や蓄積が必要になる

データドリブン経営では、データを活用するための基盤を整えることが必要です。しかし、企業によってはデータが部門ごとに分散している場合や、そもそも必要なデータが収集されていない場合もあります。このような状況では、まずはデータの統合やデジタル化の推進が必要です。例えば、アナログな記録が多い企業では、それらをデジタル化する必要があります。また、データを一元管理するための仕組みを導入しないと、収集した情報を効果的に活用することが困難です。これらの取り組みには多くの時間と労力、コストがかかります。

データドリブン経営の成功事例

企業規模を問わず、データドリブン経営の実践は、業績向上と経営基盤の強化に直結する可能性を秘めています。これを成功させるためには、適切なシステムの導入とともに、課題を明確にし、データを活用する環境を整えることが重要です。

マツモトプレシジョン「SAP ERPの導入でデータドリブン経営へ変革」

福島県喜多方市に本社を置くマツモトプレシジョンは、売上高22億円規模の精密機械部品加工メーカーです。同社では、全体的な売上高や利益については把握できていたものの、製品ごとの原価や利益率が不明瞭であったため、経営判断が難しい状況にありました。この課題を解決するため、同社はSAP ERPを導入し、積極的にDXを推進しました。

SAP ERPの導入により、製品ごとの原価を見える化できたため、そのデータをもとに生産品の管理対象の絞り込みやロット数の見直しを実施します。その結果、管理工数の削減と利益率、生産効率の改善が実現しました。その成果として、売上総利益率を30%向上し、営業利益率も3%改善させることに成功しています。また、こうした経営改善の成果を従業員にも還元し、全従業員の基本給与が引き上げられました。

赤城乳業「データドリブン経営で不動在庫削減と売上倍増」

アイスクリームの製造で有名な赤城乳業も、データドリブン経営の導入で大きな成功を収めた企業のひとつです。同社では、業務の効率化と経営の改善を目指してシステム戦略を見直し、SAP ERPを導入しました。当初は導入候補外であったSAP ERPですが、その機能性や操作性、コスト面が評価され、最終的に採用が決定しました。

導入後の具体的な取り組みとしては、不動在庫の削減と原価管理の徹底が挙げられます。不動在庫を減らすためにPSI(生産・販売・在庫)管理を最適化し、必要な在庫だけを保有する体制を整えました。また、原価管理の精度を高めることで、製品ごとの収益性を向上させることにも成功しています。

これらの施策により、業務効率が向上し、経費削減も実現しました。その結果、売上高は導入前の297億円から570億円にまで拡大しています。

データドリブン経営を成功させるためのポイント

データドリブン経営は、うまく取り入れれば膨大なデータを活用し、企業の意思決定や業務運営を最適化することが可能です。ただし、成功を収めるには以下で解説する重要なポイントを押さえたうえで導入する必要があります。

データ活用基盤を整備する

データドリブン経営の土台となるのが、データ活用基盤の整備です。どれだけ多くのデータを収集できたとしても、それを蓄積し、管理する仕組みがなければ意味がありません。企業はまず、データウェアハウスやデータマネジメントプラットフォームなどの活用基盤を構築し、情報を一元的に管理する必要があります。

また、収集したデータを可視化することも重要です。これにより、意思決定に必要な情報を容易に把握でき、分析結果をスムーズに活用することが可能になります。

専門の人材を採用・育成する

データを活用するための基盤が整っていても、それを使いこなす人材がいなければ十分な成果を上げることは困難です。データ分析や意思決定に必要なスキルを持った専門人材を確保することが求められます。特に、部署を横断してデータを統合的に扱える能力を持つ人材が重要です。

外部のコンサルタントに依頼する選択肢もありますが、データドリブン経営を企業文化として定着させるためには、内部に専任の人材を配置することが効果的です。また、既存社員へのスキルアップ研修や育成プログラムを実施することで、全社的にデータ活用への理解を深めることが可能になります。

データドリブン経営の文化を定着させる

データドリブン経営を一時的な取り組みとして終わらせないためには、組織全体にその文化を浸透させる必要があります。データを収集し、分析するだけでは不十分であり、それを実際のビジネス施策に反映させることが求められます。

また、データを基に仮説を立て、施策を実行し、その結果を検証するサイクルを回し続けることも重要です。このプロセスを繰り返すことで、データドリブン経営の効果が徐々に現れ、組織全体にその考え方が根付いていきます。部門を超えた協力体制を整えることで、初めて企業全体で一貫性のあるデータ活用が実現可能になります。

自社に合ったツールを導入する

データ活用を効率化するには、自社の状況に適したツールの選定が欠かせません。特に、データの収集や分析を円滑に行うためのツールは、業務の効率化に大きく寄与します。既存のシステムとの連携が可能かを確認し、導入後の運用に支障がでないように準備を進めることがポイントです。

統合型ERPシステムは、データドリブン経営を進める上でおすすめです。特に中小企業向けのERPソリューションは、コスト面でも導入しやすく、選択肢が増えています。ツールを導入した後は、データを可視化し、次のアクションにつなげる取り組みも続けていくことが重要です。

自社の競争力を高めるには「データドリブン経営」が必要

現在のビジネス環境では、データを活用することで競争力を高める経営が中小企業にも求められています。これを実現するには、鮮度や精度、粒度の高い情報をリアルタイムで活用できる体制を整えることが必要です。

データドリブン経営を実現する上で特に注目されるのが、業務領域を網羅したERPシステムの導入です。その中でも、No.1のシェアを誇る「SAP ERP」は、企業の規模や業種を問わず、データを最大限に活用するための最適なソリューションを提供しています。

まとめ

データドリブン経営は、企業が変化の激しい市場環境に適応し、競争力を維持・向上させるために重要です。ただし、実現には、データの収集・分析・活用を円滑に行うための基盤整備や適切なツールの導入など、それなりの準備も求められます。また、これらの取り組みを支える組織文化の醸成や人材の育成も同時に進めなければなりません。

中小企業にとっても、データドリブン経営はもはや特別なものではなく、企業成長のための有効な手法として位置づけられるべきです。DX実現の手段としてデータドリブン経営を推進することで、より強固な経営基盤を築き、長期的な競争優位性を確立することが可能です。今こそ、データを活用した経営変革に着手するべきタイミングではないでしょうか。

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クラウドERP導入ガイド編集部
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