SAPは、圧倒的な信頼性と柔軟性、そして高度な機能から、世界中の企業に採用されています。多数の機能領域をカバーするSAPですが、会計システムとしての導入にはどのようなメリットがあるのでしょうか。この記事では、SAPの概要や会計関連の機能、会計システムとしてSAPを導入するメリットについて詳しく解説します。
1. SAPとは
SAPはドイツに本社を置くソフトウェア企業です。SAPのERP(Enterprise Resource Planning)ソフトウェアは、多くの大企業や中堅・中小企業で採用されており、国内・国外問わずグローバルに導入実績があります。
SAPのERP製品は、会計、財務、人事、製造、サプライチェーン管理などの機能を備え、企業の業務プロセスを統合して効率化を図ることが可能です。
ERPとは?
ERPとは、企業の主要業務(生産、販売、会計、人事など)を統合管理するシステムです。業務プロセスの効率化、情報の一元管理、経営の迅速な意思決定を支援することを目的とし、リアルタイムでのデータ共有や部門間の連携強化、業務の自動化を実現します。
ERPの導入により、コスト削減や業務の透明性向上、データの正確性確保、競争力強化などが期待できます。
2. 会計関連のSAPモジュール
SAP ERPでは、自社にとって必要な機能をモジュール単位で利用可能です。ここでは、会計領域に関するSAPモジュールを紹介します。
FI
SAPのFI(Financial Accounting)モジュールは、財務会計の機能を提供します。会計仕訳(FI-GL)、債権債務管理(FI-AR)、固定資産管理(FI-AA)などの機能が含まれており、一般的な企業の財務会計処理は網羅しています。
FIモジュールを利用すれば、データをリアルタイムで記録し、報告できるようになります。また、監査証跡機能が備わっており、監査の要求に対応しやすい点も特徴です。後述するほかのモジュールとの併用により、企業全体の財務管理を効率化できるでしょう。
CO
SAPのCO(Controlling)モジュールは、管理会計の機能を提供します。間接費管理(CO-OM)、原価管理(CO-PC)、収益性分析(CO-PA)など、企業のコストおよび収益管理を支援するための機能が備わっています。
COモジュールの活用により、コストと収益データをリアルタイムで分析し、経営判断をサポート可能です。予算の作成、各部門へのコスト配分、コスト管理、レポートの作成などのタスクも効率的に実施できるでしょう。FIモジュールとCOモジュールを合わせて導入すれば、一般的な企業で求められる財務会計・管理会計の機能を網羅できます。
MM
SAPのMM(Materials Management)モジュールは主に調達に関する機能を提供します。企業の資材調達および在庫管理を支援するための仕組みが備わっており、購買依頼書の作成や発注、納品、請求書の管理や在庫管理、入出庫管理が可能です。
MMモジュールにて登録された調達情報はFIモジュールと連携され、自動で会計仕訳として登録されます。これにより、調達時と会計処理時に複数回システムへ入力する手間を減らせます。
SD
SAPのSD(Sales and Distribution)モジュールは、販売管理に関する機能を提供します。販売および流通プロセスの管理機能が備わっており、見積の作成や受注処理、価格設定、配送管理、請求管理、顧客データ管理などが可能です。
MMモジュールと同様、SDモジュールにて登録された販売情報はFIモジュールと連携され、自動で会計仕訳登録されます。
3. 会計システムとしてSAPを選ぶ理由
会計システムとしてSAPを採用すると、以下のようなメリットを得られます。
リアルタイムでのデータ活用
SAPの大きなメリットが、リアルタイムでのデータ活用が可能な点です。調達に関する情報は、前述したMMモジュールにて処理され、会計情報としてデータベース化されます。同様に、販売に関する情報はSDモジュールを通して会計情報としてデータベース化されます。
調達、販売、会計が個別のシステムに分かれていると、データを一元化するだけでも手間がかかり、リアルタイムでのデータ同期は困難です。SAPであれば、自社の会計に関するデータをスピーディに把握できます。
業務プロセスの標準化
業務プロセスの標準化を行える点もSAPのメリットです。会計業務においては、できるだけ効率的かつミスの少ない対応が求められます。SAPが推奨する業務プロセスに自社の業務を合わせることで、自然と業務を最適化できるでしょう。
SAP導入により、いわゆるBPR(Business Process Re-engineering)として、自社の業務プロセスの改革も実施できます。
自社に必要な機能の選択
SAPはモジュール化されたシステムを提供しているため、自社のニーズに合わせて必要な機能のみを選択できます。たとえば、財務会計と管理会計領域の機能を利用でき、これらに調達・販売領域の機能を追加することも可能です。
そのほかにも、プロジェクト管理や品質管理、生産計画、物流管理などさまざまなモジュールが用意されています。企業は自社の事業内容や既存システムを踏まえ、最適なスコープでSAPを導入できます。
生成AI機能の活用
近年、ビジネスにおける生成AIの活用が進んでおり、SAPにおいても高度な生成AI機能を利用可能です。
SAPが提供する生成AIアシスタント「Joule」により、たとえば会計領域においては「レポート分析のアシスタント」「予算編成におけるシミュレーション」「回収優先度や回収遅延リスクの可視化」などの機能を利用できます。最新の生成AI機能を活用できる点も、会計システムとしてSAPを選ぶべき理由といえるでしょう。
会計監査・法対応における対応のしやすさ
会計システムの導入においては、会計監査への対応の容易さが重要なポイントとなります。SAPでは、単一のデータベース上で一元化されたマスターデータを使用することで運用が可能です。そのため、監査対応時に複数のシステムを併用したり、データの整合性を確認したりする手間を省き、効率的な対応が実現できます。
また、財務会計に関する法制度の変更にも、SAPは迅速なアップデートを提供するため、常に最新の法規制に準拠した運用が可能です。
4.まとめ
この記事では、会計システムとしてSAPを選ぶべき理由についてご紹介しました。大企業向けのイメージが強いSAPですが、近年では中堅・中小企業における導入事例も増えています。特に、クラウド型のSAP ERP「SAP S/4HANA Cloud ERP」は、導入のしやすさから中堅・中小企業におすすめです。会計システムの導入を検討されている方は、ぜひSAPの採用を検討してみてはいかがでしょうか。