2018年に経済産業省がDX推進のガイドラインを公開して以降、その重要性が注目されています。しかし、中小企業では、DXの取り組みがほとんど進んでいないのが現状です。
中小企業におけるDXの重要性
DXは企業規模にかかわらず、取り組むべき重要課題です。今一度、DXの意味と中小企業にDXが必要な理由を確認しておきましょう。
DXの意味
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ビッグデータやIT技術で業務プロセス、企業文化、ビジネスモデルを変革し、企業の競争力や価値を高めることです。
近年、少子高齢化による人手不足や自然災害、感染症の蔓延などが企業経営に影響を与えています。また、市場変化が速くなり、経験や勘に頼った運営が難しくなっています。大企業のように潤沢な資金や豊富な人材があれば、こうした課題に対してさまざまな手段が取れますが、大企業ほど資金や人手に余裕がない中堅・中小企業は手段が限られます。
このような状況下で限られたリソースを最大限活用し、コストを削減しながら業務の質を向上させ、持続的な成長の基盤を整えるためにはDXが欠かせません。加えて、中堅・中小企業にマッチした取り入れ方をするのも重要です。
例えば、後段で紹介する「マツモトプレシジョンの事例」の松本社長は、「世の知見を自分たちの目線で活用したら良い」と語っています。すでに世の中で有効だと証明されているものを、自分たちの目線で取り入れていくことが、中堅・中小企業のアプローチとして有効です。
デジタル化(IT化)とDXの違い
デジタル化(IT化)とは、技術を業務に導入し、効率化や生産性向上を図ることです。例えば、電子契約システムや会計システムの導入などが該当します。
一方、DXはIT技術で業務効率化を図るのに留まらず、業務プロセスや企業文化をも変革し、競争力や企業価値を向上させることです。つまり、デジタル化はDXのための手段であり、DXはその先の目標であるといえます。
もちろんデジタル化は、業務効率や生産性を向上させ、企業に大きなメリットをもたらしますが、業務プロセスや企業文化の変更までは含みません。中小企業が大きく変化するには、デジタル化の先にあるDXまで進むことが重要です。
中小企業におけるDXの現状
情報処理推進機構(IPA)の調査によれば、従業員数1,001人以上の大企業では約96.6%が何らかのDXに取り組んでいます。しかし、301~1,000人の企業は85.9%、101~300人の企業は78.8%、100人以下の企業では44.7%と、規模が小さくなるほど割合が減少します。さらに、大企業の64.3%が全社的にDXを推進していますが、企業規模が小さくなるほど「一部の部門のみ」「部署ごとに個別で」推進する割合が増加します。
参照元:独立行政法人情報処理推進機構|DX動向2024
(URL:https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/eid2eo0000002cs5-att/dx-trend-2024.pdf)
※P2「図表1-2DXの取組状況(従業員規模別)」をご参照ください。
また、中小企業基盤整備機構の調査では、31.6%の企業が「必要だと思うが取り組めていない」、37.2%が「取り組む予定はない」と回答しています。
参照元:独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査(2023年)
(URL:https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202310_DX_report.pdf)
※P7「4.DXの取組状況について」をご参照ください。
これらのデータから、中小企業は大企業に比べてDXの進捗が遅れていることがわかります。
中小企業のDX導入が進まない理由と課題
なぜ中小企業ではDX導入が進まないのでしょうか。
人材が不足している
中小企業でDXが進まない主な理由は、IT人材の不足です。先に紹介した中小企業基盤整備機構のレポートによれば、28.1%がIT人材不足、27.2%がDX推進に関わる人材不足をDX導入の課題として挙げています。
参照元:独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査(2023年)
(URL:https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202310_DX_report.pdf)
※P13「図表16DXに取り組むに当たっての課題」をご参照ください。
近年、世界的にIT人材が不足しており、日本でも年々その深刻度が高まっています。2018年に公表された経済産業省のレポートによれば、2025年には約43万人のIT人材が不足するとの予測があり、多くの企業がIT人材を取り合っている状況です。
参照元:経済産業省|DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf)
※P27「2025年の崖」をご参照ください。
転職市場でも1人の求職者に対して多数の企業からオファーが来るほどで、大企業に知名度や待遇面で上回ることが難しい中小企業は、IT人材の獲得が難しくなっています。
DX推進のための予算確保が難しい
人材不足以外では、DX推進のため予算が確保できない企業もあります。中小企業基盤整備機構のレポートでは、24.9%の企業が「予算の確保が難しい」と回答していました。
参照元:独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査(2023年)
(URL:https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202310_DX_report.pdf)
※P13「図表16DXに取り組むに当たっての課題」をご参照ください。
社内のDXが進み業務効率化が実現できれば、コスト削減につながります。しかし、DXに取り組むためにはシステム導入や従業員教育に初期費用がかかります。大企業ほど資金に余裕がない中小企業は、DXに多額の費用をかけるのが難しく、次段で紹介するほかの課題とも相まって予算確保が困難と判断しているようです。
具体的な効果や成果が見えない
中小企業基盤整備機構のレポートにて、21.0%の企業がDXの具体的な効果や成果が見えないことを、DXに取り組まない・取り組めない理由として挙げています。
参照元:独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査(2023年)
(URL:https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202310_DX_report.pdf)
※P13「図表16DXに取り組むに当たっての課題」をご参照ください。
DXは企業の在り方を変革しますが、事業内容や文化が異なるため、明確な成功手法は存在しません。また、特定の部署のみで進められるものではなく、全社で取り組む必要がありますが、IT関連部門以外の従業員にはメリットが伝わりにくいことが課題です。
加えて、企業の在り方を変えるには経営層の判断やトップダウンの指示が欠かせないにもかかわらず、経営層自身が取り組みに前向きでないケースも多あります。効果が分からないものに投資する決断は難しく、これが前項の「予算確保が難しい」という課題にもつながります。
何から始めるべきかが分からない
先述の通り、DXは明確な正解がなく、全社を挙げた大規模な取り組みとなるため、手順や段取りを把握するのが難しく、「何から始めればよいかわからない」という状態に陥る企業も少なくありません。中小企業基盤整備機構のレポートによれば、19.9%の企業が「何から始めてよいかわからない」と回答しています。
参照元:独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査(2023年)
(URL:https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202310_DX_report.pdf)
※P13「図表16DXに取り組むに当たっての課題」をご参照ください。
中小企業はIT人材やDXに関わる人材の確保が難しいため、そもそもDXに関する知識やノウハウが不足している点もベースにあると想定されます。
DXに取組もうとする企業文化・風土がない
中小企業基盤整備機構のレポートによれば、「DXに取組もうとする企業文化・風土がない」と回答した企業が16.3%でした。
参照元:独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査(2023年)
(URL:https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202310_DX_report.pdf)
※P13「図表16DXに取り組むに当たっての課題」をご参照ください。
事業が順調な企業は、手間やコストをかけてDXを進めることに慎重になりがちです。新たな取り組みが現場を混乱させ、事業に支障を来したり、退職者を増やしたりするリスクを考えれば、現状維持を選ぶ経営者が多いのも無理はありません。DXは一朝一夕で効果が出るものではないため、事業が順調なときこそ進めておくのが望ましい取り組みです。しかし、多くの企業は問題が起きるまで意識を変えるのが難しいのが現状です。
経営層によるDXへの意識・理解が不足している
DXが進まない理由として予算確保や企業文化・風土などを挙げましたが、これらの課題の根本には経営層の意識・理解不足があると考えられます。中小企業基盤整備機構のレポートでも、10.6%経営層の意識・理解不足を原因としています。
参照元:独立行政法人中小企業基盤整備機構|中小企業のDX推進に関する調査(2023年)
(URL:https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202310_DX_report.pdf)
※P13「図表16DXに取り組むに当たっての課題」をご参照ください。
中小企業の経営層の中には「DXは大企業が取り組むもの」と考える人も少なくありません。DXは理解が難しく、自分に関係ないと考えて学ばないため、取り組みが進まないまま放置されるのです。
中小企業がDX導入を推進するメリット
中小企業がDXに取り組むと、さまざまなメリットが得られます。
業務の効率化
DXによってデータ活用の基盤を整え、一元管理を始めると、社内のさまざまな業務プロセスが改善されて効率化が進みます。特に人手と時間を取られがちな、経理・事務作業や顧客対応などの自動化も可能です。単純な業務に人的リソースを割く必要がなくなれば、多くの中小企業が抱える人手不足という課題も解消されます。
生産性の向上
DXによって業務効率化が進むと従業員がノンコア業務に追われることがなくなり、コア業務に集中できるようになります。従業員がコア業務にリソースを割けるようになれば、営業活動により多くの時間を割けるほか、問い合わせ対応に中断されることなく作業を進められるため、生産性が向上します。
データドリブンな経営の実現
IT・デジタル技術の進化によって、企業は多くのデータを蓄積できるようになりましたが、それらの中には不要なものも多く混在しています。データを活用するには、必要な情報だけを抜き出さなくてはなりません。
DXを推進すればデータ収集・分析が容易になるため、より効率的にデータを活用できるようになります。社内での情報共有もスムーズになるので、正確でスピーディーな経営判断を行えるようになるはずです。DXを進めることでデータを根拠とした経営が実現し、勘が外れて事業が傾くリスクを軽減できます。
競争力の強化
DXを推進して従業員のリソースが空くようになると、これまで手が回らなかった新商品やサービスの企画、既存製品の品質向上に注力できるようになります。
中小企業のDX導入で重要な3つのポイント
中小企業がDXを導入するに当たり、押さえておくべき重要なポイントが3つあります。
1.経営層の強いコミットメント
DXはただの業務効率化の手段ではなく、企業全体を変革させるものであるため、経営層が意識を変えてトップダウンで進める必要があります。
部署を超えた協力が必要なので、IT関連部署など特定の部署だけが努力しても上手くいきません。経営層が主体となり、必要な施策を進めていきましょう。
2.自社の課題・弱みの把握
DXの効果を最大限得るためには、自社の実情に合った施策を実施する必要があります。他社のやり方が自社にも合うとは限らないため、自社の課題や弱みを把握し、DXによってどう解決できるのかを考えることが大切です。
3.従業員への認知拡大
DXを推進すると、これまでのやり方から大きく変わるため、現場の反発が起こる可能性があります。どのようなメリットがあるのかが分からないままトップダウンで施策を推し進められると、従業員は納得できません。まずは電子契約システムを導入する、新たな会計システムを利用するなど一部の業務や部署から始め、徐々に全体に拡大していきましょう。
DX導入の成功事例に学ぶ中小企業の変革
ここでは、DX導入の成功事例を3つ紹介します。
マツモトプレシジョンの事例
マツモトプレシジョン株式会社は、福島県喜多方市に所在する精密機械部品の加工メーカーです。製品の資材調達から熱処理までをワンストップで行う生産体制を整えており、主に自動車部品や空気圧制御部品、工業用ミシン部品を取り扱っています。
2014年に事業承継のために入社、3年後に4代目社長に就任した松本敏忠氏は、IT関連の知識に乏しかったものの、企業が抱える課題解決にDXが必要だと判断し、積極的に施策に取り組んだそうです。
抱えていた課題
現社長の松本氏がDX推進に取り組む以前、マツモトプレシジョン株式会社は「利益を出せている製品がどれか分からない」という状況に陥っていました。
企業全体の売上高や利益、各製品の販売数は把握できているものの、製品ごとの原価や利益は把握しておらず、「大量に作っている=売れている」程度の認識しかなかったそうです。
しかし、どれだけ製品が売れても原価が把握できていなければ、どれくらいの利益を得ているのかも分かりません。調査の結果、大量に生産・販売しているのに赤字になっている製品もあったといいます。このような事態になった原因を調べてみると、いくつかの課題が洗い出されました。
まず、生産・販売・会計など各部門のシステムが分断されており、データが連携されていないことが挙げられます。それから、手書きの台帳や表計算ソフトへの手入力で在庫管理や購買管理を行っているため、効率性にも難がありました。さらには、全体の原価は把握できているものの、製品別の原価管理ができていない点も課題でした。
このような状況が長く続いていたため、従業員は一生懸命働いているにもかかわらず、20年間ほぼ給料が上がっていませんでした。
課題の解決方法
多くの課題を解決する方法として松本氏が行った施策が、SAPERPの導入によるDX推進です。部門ごとに分かれていたシステムを一元化し、製品の原価をはじめとしたさまざまなデータを全社で共有できるようにしました。
また、システムを自社の都合に合わせるアドオン開発は、導入までに膨大な時間と費用がかかります。そのため「FittoStandard」、つまり業務の側をシステムに合わせるアドオンなしの方法で、DX推進のコストを低減しました。
DX推進の結果
SAP ERPの導入でDXを推進し、個別に管理されていたデータを一元管理するようになった結果、大きな課題であった製品ごとの原価の見える化に成功しています。
また、可視化したデータを基に、生産する製品の品目を12,000点から2,000点まで削減したことで、管理工数を減らしました。その結果、売上総利益は30%、営業利益率は3%向上し、20年間変わっていなかった従業員の基本給も4%アップを実現しています。
さらにSAP ERPで収集・分析したデータからCO2排出量を算出して製品に表示するなど、GX(グリーントランスフォーメーション)にも取り組み、「社会に選ばれる企業」を目指しています。
赤城乳業の事例
赤城乳業株式会社は埼玉県深谷市に本社を置く、昭和6年創業のアイスメーカーです。「ガリガリ君」のメーカーといわれると、分かる方も多いはずです。
創業当初から高い評価を得ていた冷凍技術や業界の常識にとらわれない斬新な発想を武器に、「ガツン、とみかん」や「BLACK」など消費者の心を掴むアイスを世に生み出しています。
そんな赤城乳業株式会社は、経済産業省が2018年にDX推進のガイドラインを公開するより前からDXに取り組んでいます。同社がDX推進に取り組んだきっかけとなる課題や解決方法とは、どのようなものなのでしょうか。
抱えていた課題
赤城乳業株式会社が抱えていた課題は、アイスという商品特有のものです。季節商品であるアイスは、時期によって売上が大きく変動します。同社では4~9月に売上が大幅に上昇し、気温が下がるに従って売上も大幅に下がる状態にありました。
特に夏場は1年でもっとも売上が上がることから、春ごろから在庫を備蓄しなくてはなりません。この不動在庫が少なすぎると販売機会を逃し、増やしすぎると倉庫の維持費として高額なコストがかかります。
そのため、PSI(生産・販売・在庫)管理の最適化が必要でしたが、当時の赤城乳業株式会社では販売管理と工場管理のシステムが分かれている上に、生産数や販売数、在庫数などのデータが表計算ソフトで管理されていました。
さらに、分断されているシステムのデータが連携されるのは月1回のみで、リアルタイムで確認できない状況にあったそうです。原価管理に至っては、年に1回手作業で行われており、商品ごとの原価や利益を正確に把握するのが困難でした。
課題の解決方法
生産数や在庫数、原価などのデータが把握しづらい状況を打破し、PSI管理強化や原価管理を徹底するために赤城乳業株式会社の選んだ方法が、SAPERPの導入です。
解決策を模索し始めた当初、SAP ERPはコストが高く使いにくい大企業向けシステムというイメージをもっていたそうです。そのため候補から外していたものの、課題解決の解決策としてERPの導入を決めたときにSAP ERPの情報も収集したといいます。
さらにSAP ERPのデモを試してみた結果、「高くて使いにくい」と思い込んでいたSAP ERPのコストが想定より安い上に使いやすいことが判明し、SAP ERPの導入が決定された次第です。
DX推進の結果
SAP ERPを導入した結果、強化されたのが単品別原価管理です。年1回の手作業による原価管理が自動化され、毎月原価を確認できるようになりました。さらに販売管理や工場管理、表計算ソフトに入力されていた生産数や在庫数といったデータも一元化されてリアルタイムで確認できるようになっています。
また、大きな損失でニュースにもなった「ガリガリ君リッチナポリタン味」の不動在庫化を経験し、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)にも着手しました。BPRとITシステム改革を同時に進めたことによってPSIの最適化が進み、不動在庫が削減されて利益率が大きく向上した結果、売上高も大幅に拡大しています。
オプテックスの事例
オプテックス株式会社は、滋賀県大津市に本社がある中堅のセンサーメーカーです。自動ドアのセンサーや防犯、環境に関わる製品を手掛けており、世界トップクラスのシェア率を誇ります。東京都をはじめ日本各地に支店や営業所があるほか、世界14の国と地域に生産・販売拠点を置き、世界の80か国以上で製品の販売をしています。順調に事業を拡大しているオプテックス株式会社ですが、グローバルな企業ならではの課題に悩み、その解決策としてDXを推進しました。
抱えていた課題
オプテックス株式会社は、事業拡大やグローバル展開のために国内外に拠点を増やしていきましたが、各拠点のシステムは個別に構築されていました。国も地域も異なることから、拠点ごとの業務に合う仕組みづくりができるよう配慮したためです。
しかし、システムが分かれていることが原因で、拠点間や全社で情報共有がスムーズにできなくなってしまいました。さらには、拠点が設置された時期が違うためシステム導入時期も異なっており、古いシステムのまま業務を行っている拠点も存在していました。
このような状況では拠点ごとの受注や生産、在庫状況を把握するのが困難で、各国・各地域の市場動向の把握も遅れてしまいます。
そうして全体を俯瞰した経営判断が難しくなっていたときにリーマンショックが起こり、需要急変に上手く対応できず業績が下がってしまいました。ここで自社の弱み・課題に気づき、解決策を模索し始めたそうです。
課題の解決方法
オプテックス株式会社がグローバル企業ならではの課題の解決策として考えたのが、「グローバル業務改革」という守りのDX推進です。新たなERPを導入し、これまで拠点ごとに分かれていたシステムを、統合型ERP SAP S/4HANAによって1つに統合しました。
また、システムに業務を合わせるFit to Standardでの推進・実行にこだわって、業務改善も並行して行うことで、世界中の多種多様な企業と取引するための業務プロセスを構築しています。
DX推進の結果
統合型ERP SAP S/4HANAの導入で、拠点ごとに管理した受注・生産・在庫情報をリアルタイムで確認できるようにした結果、サプライチェーンの最適化などをはじめ、社内の業務効率が大きく向上したそうです。業務効率化の実現で得た利益は従業員に還元したことから、システム変更という従業員の反発が起こりやすい改革であったものの、賛同者も増加しました。また、全拠点の経営状態を可視化できたことから、迅速に経営判断ができるようになっています。
中小企業で重要なのは「守りのDX」
DXには競争率の向上を目指す「攻めのDX」と、業務効率化を図り安定した事業運営を目指す「守りのDX」があります。このうち中小企業で重要になるのは「守りのDX」です。もちろん、中小企業も市場での競争力を高めることは大切です。しかし、これからも中小企業が生き残っていくには、限られたリソースをいかにして効率的に活用するかを考える必要があります。
また、「データ活用基盤」「データ一元管理」「マスター管理」を実現するための統合的データ環境を構築することで、経験や勘のみに依拠しないデータドリブン経営が可能になります。
統合的データ環境を構築する手段として有効なのが、成功事例で紹介した企業も導入していた「SAP ERP」です。大企業向けと考えている方も多いですが、実はコストを抑えられて使いやすく、中小企業でも活躍するため、導入を検討する価値があります。
まとめ
多くの中小企業がDXの必要性を感じつつも、着手できないまま放置しています。しかし、これからの日本は今以上に少子高齢化が進み、人材不足に拍車がかかります。さらに、市場がとてつもないスピードで移り変わるため、いつかは会社としての体制も変化させざるを得なくなります。簡単なことからで良いのでDXに着手し、業務効率化や生産性向上を実現させましょう。