企業の健全な経営を支えるためには、毎月の財務状況を正確かつ迅速に把握し、経営判断に活かすことが欠かせません。そのために重要となるのが「月次決算」です。しかし、実際の業務では膨大なデータ処理や複雑な作業が発生し、締め切りに追われる担当者も多いのではないでしょうか。そんな状況を打破し、効率的な月次決算業務を実現するためには、最新のツールやプロセスの見直しがカギとなります。本記事では、月次決算の基本から、その効率化に役立つ具体的な方法までを徹底解説します。業務負担を減らしつつ、スピーディで正確な決算を目指すためのヒントをお教えしますので、ぜひ最後までお読みください。
データドリブン経営と月次決算業務は密接な関係!?
収集したデータを分析し、その結果に基づいて経営を行うデータドリブン経営と月次決算業務は実は密接な関係があるのを知っていますか?どのような関係性があるのか、4つの理由を解説していきます。
経営判断のスピードと精度が向上する
データドリブン経営と月次決算業務は、密接な関係にあります。特に、経営判断のスピードと精度という点において、両者は切っても切れない関係にあり、それぞれが相手の価値を高めてくれます。
従来の経営判断は、経験や直感に頼ることが多く、意思決定までに時間がかかることがありました。しかし、データドリブン経営では、月次決算で得られる詳細な数値データを分析することで、リアルタイムで事業状況を把握し、客観的な根拠に基づいた迅速な意思決定が可能になります。
例えば、月次決算で売上高が減少していることが判明した場合、従来であれば原因究明に時間がかかり、対策も後手に回りがちでした。しかし、データドリブン経営であれば、どの製品の売上が減少しているのか、どの地域で売上が伸びているのかなど、詳細なデータを分析することで、問題の原因を特定し、迅速な対策をとることができます。
データの可視化と活用が促進される
月次決算データを可視化し、直感的に把握することで、データに基づいた戦略立案が加速するという点も理由の一つです。
従来の月次決算では、大量の数字が羅列された報告書が作成されることが多く、経営者がそのデータを直感的に理解し、意思決定に活かすことは簡単ではありませんでした。一方、データドリブン経営では、様々なデータを収集・分析し、視覚的に分かりやすいグラフやチャートにまとめることで、経営者が直感的にデータを読み解ける環境を提供します。月次決算データも、このデータ可視化の対象となり、売上推移、利益率、費用構成など、重要な指標を一目で把握できるようになります。
さらに、データ可視化ツールを活用することで、過去のデータとの比較や複数の指標間の関係性を簡単に分析できるようになります。これにより、経営者は経営状況の変化を早期に察知し、適切な対策を練ることができます。
このように、データの可視化によって、複雑な経営データを直感的に理解できるようになり、月次決算の分析結果を基に、より迅速かつ的確な意思決定が可能となるのです。
予測分析と戦略立案に貢献する
予測分析で得られた将来の予測を基に、戦略立案を行うことで、より精度の高い事業計画を立てることができるのも理由の一つです。
月次決算で得られる詳細な数値データを、データドリブン経営の分析手法で深堀りすることで、過去のデータに基づいた将来の売上や利益を予測することが可能となります。従来の経験や直感に頼った予測に比べ、より客観的で精度の高い予測ができ、経営計画の精度向上に大きく繋がります。
また、これらの予測データを基に、新たな事業展開や既存事業の改善など、具体的な戦略立案を行うことができます。例えば、特定の製品の売上が伸びていることが予測される場合、その製品の生産量を増やしたり、新たな販路を開拓したりといった施策を検討することができます。
さらに、月次決算データを分析することで、ビジネスモデルの課題や改善点を早期に発見し、機動的な対応を取ることができます。例えば、ある顧客層の購買行動が変化していることが判明した場合、その顧客層に合わせた新たな商品やサービスの開発を急ぐといった対応も可能となるのです。
効率化によりリソースの最適配分が可能に
データドリブン経営では、月次決算データをリアルタイムに分析し、市場の変化に迅速に対応することができます。これにより、限られたリソースを最適なタイミングで最適な場所に配分することが可能となります。
従来は経験や勘に頼っていたリソース配分があったことで、非効率的な業務が多々ありました。しかし、データに基づいた意思決定により、リソースの無駄遣いを減らし、収益性の高い事業に集中できるようになりました。例えば、月次決算で特定の製品の売上が伸び悩んでいることが判明した場合、その製品へのリソース配分を減らし、より成長が見込める他の製品への投資を増やすといった判断が可能となります。また、どの販売チャネルが最も効果的か、どのマーケティング施策が費用対効果が高いのかといった分析も行うことで、限られたリソースを最も効果的に活用することができます。さらに、データドリブン経営では、リアルタイムでデータを取得・分析することが可能であり、経営環境の変化に迅速に対応することもできるのです。
このように、データドリブン経営と月次決算業務は、少ないリソースで最大の成果を上げることができ、企業に貢献する関係性となっているのです。
月次決算とは?
前文で何度も出てきた「月次決算」ですが、ここで、月次決算の定義や必要性について詳しく解説していきます。
月次決算の定義
月次決算とは、企業が毎月の財務状況や経営成績を把握するために行う会計手続きのことです。通常、月末時点で締め切られた取引データを基に、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を作成します。年1回の年次決算と異なり、月次決算は法律で義務付けられているものではありませんが、経営状況をより詳細に把握し、迅速な意思決定につなげるために多くの企業が実施しています。適切な月次決算の実施により、迅速かつ正確な経営判断が可能となり、企業の財務健全性を高める効果が期待される、重要な業務でもあるのです。
月次決算の必要性
月次決算は、企業が健全な経営を維持するために不可欠なプロセスです。その必要性は、主に3つの点が挙げられます。
第一に、経営状況の早期把握です。月次決算を通じて、売上や利益、コストの動向を毎月確認することで、問題の早期発見と迅速な対策が可能になります。
第二に、意思決定の迅速化と精度向上です。最新の財務データを基にした分析により、経営者は戦略の修正や資源配分をタイムリーに行うことができます。
第三に、株主、従業員、顧客、取引先など、企業に関わる全ての人々に対して、企業の経営状況や将来展望を透明性を持って開示することです。正確な月次決算の報告は、取引先や金融機関からの信頼を得るためにも重要です。これにより、資金調達や取引条件の改善など、経営基盤の強化にも繋がります。
このような月次決算の重要性は、大企業に限らず中小企業にとっても非常に有効なツールです。中小企業は、大企業に比べて経営資源が限られているため、効率的な経営が求められます。月次決算を導入することで、経営資源を最適化し、企業の競争力を高めることができるため、非常に有効的と言えるでしょう。
月次決算におけるよくある課題
月次決算をおこなうにあたり、起こってしまうよくある課題があります。ここでは主な課題8つを紹介していますので、今後の参考にしながら月次決算を進めてみてください。
データの不整合・誤差
月次決算における「データの不整合・誤差」は、正確な財務情報の作成を妨げる代表的な課題の一つです。
この問題は、異なる部門やシステム間でのデータ入力の不備や伝達ミス、重複記録、記帳の遅れなどが原因で発生します。特に、複数のシステムを利用している企業では、データ統合のプロセスにおいて不整合が生じやすく、集計結果に誤差が生じることがあります。これにより、月次決算の精度が低下し、経営判断に悪影響を及ぼす可能性があります。また、修正作業に時間がかかるため、決算業務全体に遅れが生じてしまうことにも繋がります。これらを防ぐためには、システムの統一や自動化の推進、データ入力の正確性を確保するための従業員教育、定期的なデータチェックの実施が重要です。
時間のかかる手作業
「時間のかかる手作業」は、多くの企業が直面する課題です。
特に中小企業やシステム化が不十分な組織では、経理部門が膨大なデータを手作業で処理することが一般的です。このような手作業には、取引データの入力、伝票の照合、エクセルを用いた計算や集計などが含まれるのですが、この手作業により、作業ミスが発生しやすくなり、修正にさらに時間を要することもあります。
また、作業に多くの時間がかかるため、締め切りに間に合わせるための残業が常に発生し、従業員の負担が増加することも問題です。このような状況は、経営者が必要とする財務データの提供を遅らせ、迅速な経営判断を妨げる可能性があります。
解決策としては、会計システムやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入により、手作業を自動化することが効果的です。これにより、作業時間を短縮し、人的エラーを減らすと同時に、業務効率の向上と従業員の負担軽減が期待されるでしょう。
従業員のスキル不足
「従業員のスキル不足」は、正確で効率的な決算業務を妨げる主要な課題の一つです。
経理担当者が必要な会計知識やシステム操作のスキルを十分に持たない場合、データ入力ミスや計算エラーが増加し、財務報告の精度が低下します。また、会計基準や税法の変更に対応できない場合、法令違反のリスクが生じる可能性もあります。さらに、複雑な財務データの分析や経営陣への報告資料の作成が求められる場面では、高度なエクセル操作や分析スキルが不足していることが作業の遅延や品質の低下を引き起こします。
この課題を解決するためには、従業員への継続的な教育や研修の実施が不可欠です。また、マニュアルの整備や、わかりやすい操作ガイドの提供も有効です。専門家のサポートや外部講師によるトレーニングも積極的に活用し、スキル向上を図り、月次決算の精度と効率を向上させるようにしましょう。
キャッシュフローの誤認識
「キャッシュフローの誤認識」は、企業の資金繰りや経営判断に重大な影響を及ぼす課題です。
キャッシュフローは、企業の実際の資金の流れを示す重要な指標であり、特に営業活動や投資活動、財務活動による現金の出入りを正確に把握することが求められます。しかし、月次決算の中で、売上高や利益とキャッシュフローを混同し、資金の流れを過大または過小に認識してしまうケースがあります。例えば、売掛金の増加を収益の増加と誤解したり、減価償却費をキャッシュアウトフローと見なす誤りが典型的です。このような誤認識が続くと、資金繰りが悪化しているにもかかわらず対応が遅れ、最悪の場合、資金繰りが厳しく、支払いが滞る可能性があります。この課題を解決するためには、キャッシュフロー計算書の正確な作成とその分析が重要です。さらに、経理担当者へのキャッシュフロー管理に関する研修や、専用の管理システムの導入も効果的です。
予算との乖離
「予算との乖離」は、経営管理において頻出する課題の一つです。
予算は、企業が設定した目標値を達成するための指標であり、その達成度を確認するために月次決算と比較されます。しかし、実際の業績が予算から大きく乖離している場合、その原因を特定しないと、経営判断が適切に行えなくなるリスクがあります。例えば、売上が予算を下回る場合、営業活動の不振や市場環境の変化が原因として考えられます。一方、コストが予算を上回る場合、予想外の経費増加やコスト管理の甘さが問題となります。これらの乖離を放置すると、企業全体の収益性や資金計画に悪影響を及ぼします。
効果的な対策としては、月次ごとに予算との差異分析を行い、乖離の原因を迅速に特定・是正することが重要です。また、予算の柔軟性を確保し、必要に応じて予算自体を見直す仕組みを整えることも効果的です。
財務報告書の作成に時間がかかる
「財務報告書の作成に時間がかかる」ことも月次決算の課題の一つに挙げられます。
財務報告書は、経営陣や利害関係者に企業の財務状況を明確に伝える重要な資料ですが、その作成には多くの工程が伴います。まず、取引データの収集、伝票の仕訳、各部門からのデータ確認と修正が必要です。その後、損益計算書や貸借対照表の作成、キャッシュフロー計算書の整備が行われます。しかし、これらの作業が手動で行われている場合、データ入力ミスや集計ミスが発生しやすく、修正にさらなる時間を要することが課題です。また、システムが統一されていない場合、データの連携がスムーズにいかず、作業の遅延を招くこともあります。
この問題を解決するためには、会計システムの自動化やRPAの導入が効果的です。これにより、作業の効率化と精度向上が期待でき、財務報告書の作成時間を大幅に短縮できます。
経営陣からの要望変更
「経営陣からの要望変更」は、決算業務の効率と精度に影響を与える課題の一つです。
経営陣は、経営状況をより正確かつ詳細に把握するために、財務報告書のフォーマットや分析項目の変更を要望することがあります。しかし、これらの要望が月次決算の締め切り間際に発生すると、経理部門は短期間で新たな作業を追加する必要があり、業務負担が急激に増します。その結果、他の業務とのバランスが崩れ、報告書の作成が遅れることやデータの精度が低下するリスクが生じます。また、要望の頻繁な変更は、経理システムやツールの再設定を必要とし、余計なコストや時間を消費します。
このような問題が発生しないためにも、経営陣との事前のコミュニケーションを強化し、報告要件を明確にしておくことが重要です。また、柔軟に対応できるシステムの導入や、予め複数のレポートフォーマットを準備しておくことで、業務効率を向上させることができるでしょう。
不十分な締め作業のスケジューリング
「締め作業のスケジューリングが適切に行われない」と、様々な問題が発生します。
締め作業のスケジュールが甘いと、期末に業務が集中し、決算が遅延してしまう可能性が高まります。決算が遅延すると、経営状況を正確に把握できず、迅速な意思決定が難しくなります。また、データ入力ミスや処理漏れが発生しやすくなり、決算データの正確性が損なわれ、経営判断の誤りを招く可能性もあります。さらに、締め作業が集中すると、担当者の負担が多くなり、残業や休日出勤が増える可能性があります。従業員のモチベーション低下や離職に繋がってしまいます。
これらの問題を解決するためには、締め作業の手順を標準化し、マニュアルを作成することで、作業効率を向上させることが重要です。また、プロジェクト管理ツールなどを導入し、締め作業の進捗を可視化することで、遅延を未然に防ぐことができます。さらに、人員配置を最適化したり、既存のシステムを見直し、より効率的なシステムを導入したりすることも有効です。
月次決算の締め作業は、企業の経営基盤を支える重要な作業です。不十分なスケジューリングがもたらす悪影響を認識し、適切な対策を練ることで、より効率的で正確な月次決算を実現することができるのです。
効率的な月次決算業務を実現する方法
効率的な月次決算業務を進めていくために、やるべき7つの方法を紹介します。
情報の一元管理ができるERPの導入
効率的な月次決算業務を実現する方法の1つ目は「情報の一元管理」です。その手段の一つとして、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入が効果的です。ERPは企業内の各部門で発生する財務データ、販売データ、在庫情報などを一つのシステム上で統合し、リアルタイムで管理できる仕組みを実現します。この統合により、各部門間のデータ整合性が保たれるため、情報の確認や修正にかかる手間を大幅に減らすことができます。さらに、決算に必要なデータを迅速に収集・分析できるため、作業スピードが向上し、決算の精度も高まります。また、ERPは帳票の自動作成機能や監査に対応した記録管理機能も備えており、内部統制の強化にも繋がります。結果的に、企業は無駄を省き、仕事のスムーズさを向上させ、より良い判断をするための土台を築くことができます。
データ入力の精度向上と一元管理
2つ目は「データ入力の精度向上と一元管理」です。
従来の月次決算業務では、Excelなどの異なるシステムでデータを管理し、手作業で集計していたため、入力ミスやデータの食い違いが発生しやすく、結果として、正確な決算報告に時間を要していました。しかし、データ入力の精度向上と一元管理を実現することで、この問題を解決できます。例えば、先ほど紹介したERP(統合基幹業務システム)のようなシステムを導入すれば、会計、販売、生産など、企業のあらゆるデータを一元的に管理することができます。これにより、データ入力の二重化を防ぎ、ヒューマンエラーを最小限に抑えることが可能になります。
データの一元管理は、単に作業効率を向上させるだけでなく、データの信頼性も高めます。正確なデータに基づいて経営判断を行うことで、企業のリスクを低減し、より安定した成長を実現することができます。ただし、データ入力の精度向上と一元管理を実現するためには、システム導入だけでなく、従業員の意識改革や教育も重要です。全従業員がシステムの使い方を習得し、正確なデータ入力を行うことが、システムの効果を最大限に引き出すために不可欠です。
プロセスの標準化とマニュアル作成
3つ目は「プロセスの標準化とマニュアルの作成」です。
プロセスの標準化とは、業務手順やフローを統一し、誰が担当しても同じように進行できる仕組みを構築することです。これにより、業務の属人化を防ぎ、作業ミスや遅延のリスクを軽減できます。また、標準化されたプロセスを基に詳細なマニュアルを作成することで、新任者や異動者でも短期間で業務を習得できるようになります。マニュアルには具体的な手順や注意点を明記し、作業中に発生し得る問題への対応方法も盛り込むと効果的です。
このような仕組みを整えることで、業務全体の効率化が図られ、月次決算のスピードと正確性が向上します。また、問題発生時のトラブル対応も迅速になり、全体の業務品質が安定するのです。
クロージング作業のスケジュール管理
4つ目は「クロージング作業のスケジュール管理」をおこなうことです。
月次決算は複数の部門やステークホルダーが関与するため、それぞれのタスクを適切に管理し、全体の進捗を把握することが求められます。
具体的には、各タスクの期限を明確に設定し、担当者に共有することで、計画的な作業が可能になります。また、タスク間の依存関係を把握し、優先順位を適切に設定することで、業務の停滞を回避し、スムーズな処理が可能になります。さらに、進捗状況をリアルタイムで確認できるツールを活用すれば、遅延の早期発見と迅速な対応が可能になります。このようなスケジュール管理を徹底することで、クロージング作業全体の効率が向上し、月次決算を正確かつ迅速に完了させることができるようになるのです。
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの活用
5つ目は「BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの活用」することです。
BIツールは、企業内の膨大なデータを収集、分析、可視化するための強力な手段を実現できます。これにより、財務データや業績指標をリアルタイムで確認でき、迅速な意思決定が可能となります。月次決算においては、手動でのデータ集計や分析にかかる時間を大幅に削減できるため、業務の効率化が図れます。さらに、BIツールはダッシュボード機能を通じて、関係者全員が同じ情報を一目で確認できる環境を提供するため、コミュニケーションが円滑になります。
過去のデータとの比較やトレンド分析も簡単にでき、財務状況の悪化を早期に発見し、適切な対策を迅速に講じることができます。このように、BIツールを活用することで、月次決算のスピードと正確性を大幅に向上させることができます。
部門間の連携強化
6つ目は「部門間の連携強化」です。
月次決算では、経理部門を中心に複数の部門が関与し、それぞれが提供するデータの正確性とタイムリーさが業務全体の効率に直結します。連携を強化することで、データの受け渡しや不明点の確認が迅速になり、リアルタイムな情報共有を実現できます。そのためには、定期的なコミュニケーションの場を設けることが重要です。たとえば、締め切り前の進捗状況を共有するミーティングや、問題発生時に即座に対応するための連絡手段の整備が挙げられます。また、部門ごとに業務フローや期待される成果を明確にし、各部門の担当範囲が明確になり、業務の重複や抜け漏れを防ぐことができます。こうした取り組みを通じて、月次決算業務の正確性とスピードが向上し、全体の効率化を図ることができます。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入
7つ目は「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入」です。RPAを活用することで、決算処理にかかる時間を大幅に短縮し、早期に正確な決算報告をおこなうことができます。具体的には、経費精算データの収集・入力、仕訳の自動生成、各種帳票の作成、データの照合・検証など、時間と労力がかかる作業を迅速かつ正確に処理することが可能です。また、ヒューマンエラーの発生を防ぐことで、データの正確性が向上し、決算の精度が高まります。さらに、RPAは24時間稼働できるため、業務のスピードアップが図れるとともに、経理担当者はより付加価値の高い業務に集中することができます。
これにより、企業全体の生産性向上とコスト削減が期待できるのです。
効率化による月次決算業務の未来とデータドリブン経営の可能性
月次決算業務は、企業経営を支える重要なプロセスの一つです。
近年では、RPAの導入によって定型的なデータ入力や集計といった繰り返しの作業が自動化され、人的ミスを削減しながら業務効率を飛躍的に向上させることが可能になりました。これにより、従業員はデータ分析や戦略立案といった付加価値の高い業務に専念し、企業の競争力強化に貢献しています。さらに、AIや機械学習の活用が進むことで、より深いデータ分析が可能となり、リアルタイムで経営状況を把握することで迅速な意思決定を支えるデータドリブン経営の今後の進化も期待されています。
ただし、RPAやAIの導入にはシステム導入費用や従業員教育にかかるコストといった課題があります。また、質の高いデータを確保し、それを正確に分析することも重要です。
これらの課題を解決し、月次決算業務の効率化を成功させるためには、以下の取り組みが求められます。
・効率化を進めるための体制を構築する
・自社の業務内容や規模に合ったツールを選択する
・新しいシステムへの移行をスムーズに行うための教育を実施する
実際に「ヤマト運輸株式会社」や「KDDI株式会社」では、人材教育に注力することでデータドリブン経営を成功させています。データを適切に分析できる人材の育成が企業発展のカギとなり、月次決算業務の未来とデータドリブン経営の可能性をさらに広げていくでしょう。
まとめ
月次決算は企業を効率的におこなう方法の一つです。企業発展に導くだけではなく、他企業との差をつけるために必要な役割を果たします。AIの活用・RPAの導入を積極的におこない、ルーティンワークを自動化させ、よりスムーズな月次決算体制を目指しましょう。