内部統制システムとは?効率的な管理を実現するシステムの役割

 クラウドERP導入ガイド編集部

あなたの会社を、不正やリスクから守り、持続的な成長へと導く、それが内部統制システムです。日々、変化の激しいビジネス環境の中で、企業を取り巻くリスクはますます複雑化しています。不正行為、情報漏洩、法令違反・・・これらのリスクに備え、企業の信頼性を高めるためには、確固たる内部統制システムの構築が不可欠です。本記事では、内部統制システムの重要性、具体的な役割、そして中小企業がどのように内部統制を強化できるのかを解説します。

内部統制システムとは?

まずは、内部統制システムとはなにか。詳しく解説していきます。

内部統制システムの目的

内部統制システムの目的は、企業活動の効率性と健全性を確保することです。具体的には、①業務の適正化と効率化、②法令や規則の遵守、③財務報告の信頼性確保、④資産の保全などを通じて、企業価値の向上を図ります。また、リスク管理や不正防止を支援し、経営陣が組織全体の活動を効果的に行動できるようにすることも重要な役割です。このシステムにより、取引先と良好な関係性を築きあげることができ、長期的な企業成長を支える基盤が構築されるのです。

内部統制システムが義務付けられている企業とは?

内部統制システムの整備が法律で義務付けられている企業は、主に大会社と上場企業です。

大会社とは、「資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社」を指し、会社法によって内部統制システムの整備が義務付けられています。上場企業は、金融商品取引法に基づき、財務報告の信頼性を確保するため、内部統制報告書の提出が義務付けられています。

なぜ内部統制システムが重要なのか

内部統制システムの重要性は、主に以下の3つの点が挙げられます。

・不正行為の防止:内部統制システムは、不正行為が発生しにくい環境を構築し、不正行為を発見するための仕組みを備えています。これにより、企業全体の信頼性を高め、不正による損失を防ぐことに繋がります。

・業務の効率化:業務プロセスを標準化し、効率的な業務遂行を促すことで、人為的なミスを減らし、生産性を向上させます。また、リスクを事前に特定し、対策を講じることで、業務の安定化を可能とします。

・法令遵守:企業は、様々な法律や規制を守る必要があります。内部統制システムは、法令遵守のための体制を構築し、違反リスクを低減します。これにより、法的トラブルを回避し、企業イメージの向上に繋がります。

不正防止、業務効率化、法令遵守という3つの側面から、企業の健全な運営を支える重要な役割を果たしています。

GRCと内部統制システムの関係

GRCとは、Governance(ガバナンス)、Risk(リスク)、Compliance(コンプライアンス)の頭文字を取ったもので、企業がこれらの要素を統合的に管理する手法です。一方、内部統制システムは、企業の不正防止や業務効率化を目的とした仕組みのことを言います。

GRCと内部統制システム、この2つは密接な関係にあり、両者を連携させることで、企業はより強固なガバナンス体制を構築し、持続的な成長を実現することができます。内部統制システムは、GRCを実現するための具体的な手段の一つと言えるでしょう。

内部統制システムの役割とは?

内部統制システムがいかに企業にとって重要なことなのかを知ってもらうために、具体的な役割について解説していきます。

業務の効率性向上

内部統制システムの役割の一つである「業務の効率性向上」は、企業活動を最適化し、生産性を高めるために重要なことです。この仕組みは、業務プロセスの標準化や改善を通じて、人為的なミスを減らし、リソースの無駄を排除します。

例えば、業務の流れを明確化し、各部門や従業員の役割を適切に分担することで、作業の重複や漏れを防ぎます。また、ITツールや自動化を活用して業務プロセスを効率化する機会も実現します。結果として、業務全体のパフォーマンスが向上し、企業は競争力を維持・強化することができるのです。

財務報告の信頼性確保

内部統制システムは、企業の財務報告の信頼性を確保するために不可欠な要素です。財務報告の信頼性とは、企業の財務状況が正確かつ客観的に反映されていることを意味します。投資家や債権者は、企業の財務報告を基に投資や融資の判断を行うため、その信頼性は企業の信用力に直結します。不正確な財務報告は、投資家や取引先の信頼を損ない、企業の信用失墜や法的リスクを招く可能性があります。内部統制システムは、財務データの収集、処理、報告におけるリスクを管理するための仕組みを構築しているのです。

具体的には、財務プロセスの各段階でチェックとバランスを導入し、エラーや不正を防止します。たとえば、取引の承認や記録における二重チェック、定期的な帳簿の照合、または監査の実施などが含まれます。また、ITシステムを活用して、データの正確性と一貫性を確保することも重要です。これらの方法で、企業は財務情報の信頼性を向上させ、透明性の高い経営を実現します。

法令遵守(コンプライアンス)の強化

内部統制システムは、企業が法令や規制を遵守し、コンプライアンスを確保するための重要な役割を果たします。企業は多種多様な法律や規制を遵守する義務があり、これを怠ると、法的制裁や罰金、さらには企業イメージの毀損につながる可能性があります。内部統制システムは、法令違反のリスクを軽減し、コンプライアンス体制を強化します。

具体的には、法令や規則の改正に対応したポリシーや手続きを整備し、従業員に対する定期的な教育やトレーニングを実施します。また、業務プロセス内に監視と評価のメカニズムを組み込むことで、違反行為を早期に検出し、是正措置を迅速に講じることが可能です。さらに、内部監査や外部監査を通じて、コンプライアンス状況を定期的に確認し、改善の機会を特定します。これにより、企業は法的リスクを低減し、社会的責任を果たすことで、取引先から信頼を得ることができるのです。

リスク管理の強化

内部統制システムは、企業が様々なリスクを事前に予測し、その発生を防止したり、発生した場合の被害を最小限に抑えたりするための重要な役割を果たします。企業を取り巻く環境は複雑化しており、経営においてさまざまなリスクが存在します。これらのリスクには、業務リスク、財務リスク、法的リスク、さらには自然災害やサイバー攻撃といった外部リスクも含まれます。内部統制システムは、こうしたリスクを早期に特定し、適切な対応策を講じるための枠組みを構築しているのです。

具体例として、リスク評価プロセスを通じて、重大なリスクを特定し、それらのリスクが業務に与える影響を評価することが挙げられます。その結果に基づいて、リスク回避、軽減、共有、または受容といった戦略を策定。継続的なモニタリングとフィードバックを行い、リスク状況の変化に迅速に対応することができます。

不正防止と検出

内部統制システムは、企業における不正行為を未然に防ぎ、発生した場合には早期に発見するための重要な役割を担っています。この役割は、企業の信頼性と持続可能性を支える基盤として機能します。

不正行為とは、従業員や関係者が個人的な利益を追求するために行う不正な行動であり、これには資産の横領、財務データの改ざん、業務プロセスの悪用などが含まれます。内部統制システムは、これらの不正行為を未然に防ぐために、リスクの高い業務やプロセスに対する監視やチェック体制を構築します。

具体的には、職務を分担することを原則とし、一人の従業員が業務のすべてを完結させない仕組みを導入します。また、定期的な監査やレビューを通じて、不正の兆候を早期に発見することが可能です。さらに、不正行為が発生した場合には、その範囲や影響を迅速に特定し、適切な対応を取るための仕組みも整備されています。これにより、企業は不正による損失を最小限に抑え、利害関係者の信頼を確保することができるのです。

組織の文化とガバナンスの強化

内部統制システムは、単なるルールや手続きの集まりではなく、組織の文化やガバナンスを根本から変革し、より健全な組織へと導くための重要な役割を果たします。会社全体で、透明性と責任感を大切にする風土を作ります。

具体的には、企業が明確な経営方針や行動基準を設定し、トップから現場まで全社員が同じ方向を向けるよう支援します。また、ガバナンスの観点では、経営陣が意思決定をする際に必要な情報を正確かつ迅速な環境を整えることで、判断の透明性を高めます。これにより、経営の見える化が進み、組織内での信頼が強まります。さらに、内部監査や定期的なチェックを通じて、決められた方針がしっかりと実行されているかを確認し、必要に応じて改善を促すことができます。このようにして、内部統制システムは、健全な企業文化の育成と、効果的な経営管理を実現するための土台となるのです。

内部統制システムの効率的な運用方法

では、内部統制システムをどのように運用していけばいいのでしょうか。7つの効率的な運用方法紹介していきます。

業務プロセスの見直しと標準化

内部統制システムを効率的に運用するためには、業務プロセスの見直しと標準化が不可欠です。

現状の業務フローを洗い出し、非効率な部分やリスクの高い部分を特定します。不要な工程を削減したり、担当者を明確にすることで、業務の効率化を図ることができます。また、見直した業務プロセスを統一的な手順にまとめ、全従業員が共有できるようにすることです。標準化することで、業務の効率化・品質の向上・リスクの低減・監査対応の円滑化を得ることができ、組織全体としての効率化に貢献するのです。

優先順位をつけたリスク管理

内部統制システムを効果的に運用するためには、リスク管理が不可欠です。全てのリスクに対応することは現実的ではないため、優先順位をつけて管理することが重要です。

リスク管理とは、企業が直面する様々なリスクを特定し、その影響度や発生確率を評価し、適切な対策を練ることを言います。内部統制システムでは、財務報告の虚偽表示リスクや不正行為リスクなどが主な対象です。優先順位をつけることで、経営資源を効果的に配分し、重要なリスクに集中して対策を立てることができます。

具体的には、

・リスクの影響度と発生確率を軸としたマトリクスを作成し、リスクの重要度を可視化する「リスク評価マトリクス」

・識別されたリスクを一覧化し、その特性や対策状況を記録する「リスクレジストリ」

・各リスクに対して、回避、軽減、転嫁などの対応策を策定し、責任者を明確にする「リスク対応計画」

が挙げられます。優先順位をつけてリスク管理を行うことで、内部統制システムの効率化を図り、企業の安定的な成長に繋がるのです。

自動化ツールの導入

内部統制システムの効率化に、自動化ツールの導入は不可欠です。手動で作業をおこなっていた際は、大幅な時間を要するだけではなく、人為的ミスが多くありました。しかし、自動化ツール導入により、業務効率化・精度向上・リアルタイムなモニタリング・コンプライアンス強化が実現できるようになり、ビジネス効果にも繋がっているのです。自動化ツールは多岐に渡るため、企業に合った選択をすることが、今後のビジネスにどう影響してくるのかが変わってくると言えるでしょう。

定期的なモニタリング

内部統制システムを効果的に運用するためには、定期的なモニタリングも重要です。モニタリングとは、内部統制が適切に機能しているか、常に監視し評価します。

定期的なモニタリングを行うことで、内部統制の不備やリスクを早期に発見し、問題の拡大を防ぐことができます。モニタリング結果を分析することで、改善すべき点を特定し、内部統制の強化に繋がります。モニタリング結果は随時経営層に報告することで、経営判断の材料として今後のビジネスに貢献するのです。担当者が日々の業務の中で、内部統制が機能しているかを確認する「日常的なモニタリング」と内部監査部門や外部監査法人による客観的な評価を行う「独立的な評価」を組み合わせておこなうことで、より強度な内部統制システムの構築がなされていくのです。

フィードバックの仕組み作り

定期的なモニタリングだけでなく、フィードバックの仕組みも重要な運用方法の一つです。フィードバックとは、モニタリングの結果を基に、問題点や改善点を特定し、それらを解決するための対策を練るプロセスのことを言います。

フィードバックの仕組みを作ることで、問題点を早期に発見し、改善。内部統制システムの有効性を高めてくれます。またフィードバックを通して、従業員は自身の貢献を認識し、モチベーションを高めることができます。組織全体で内部統制システムの重要性を認識し、改善する際は積極的に取り組む姿勢を持てるのです。フィードバックの仕組みを構築することで、内部統制システムは、単なるルールや手順の集まりではなく、組織全体で共有され、継続的に改善される活きた仕組みへと進化すると言えるでしょう。

業務責任の明確化

内部統制システムの効率的な運用において、業務責任の明確化は極めて重要です。各従業員が自らの業務範囲と責任を明確に理解することで、各担当者が責任を持って業務を遂行するため、業務の重複や漏れを防ぎ、効率化を図ることができます。責任感があることで不正行為が発生しにくくなり、企業安泰と取引先の信頼度も格段にアップします。また、問題が発生した場合、責任の所在が明確になり、迅速な対応が可能になります。明確になれば、より責任感も増し、今後の業務に対して真剣に取り組めます。

組織全体の意識改革を促し、従業員のモチベーション向上にも繋がるため、積極的に取り組むべき方法の一つです。

コミュニケーションを図る

組織全体での活発なコミュニケーションをおこなうことも効率的な運用方法の一つです。コミュニケーションが円滑に行われることで、各部門間の情報共有がスムーズになり、問題の早期発見や解決に繋がります。また、従業員が積極的に意見交換を行い、改善提案を出しやすくなります。改善案が出ることで、企業発展に繋がるヒントにもなるため、ビジネス拡大に大きな影響を与えてくれる可能性もあります。

定期的ミーティング・意見箱の設置・情報共有システムの導入・教育研修の実施といった方法を積極的に取り入れ、企業全体の健全な発展に繋げていきましょう。

中小企業でも内部統制システムを導入して良い

内部統制システムの整備が法律で義務付けられている企業は、主に大会社と上場企業としていますが、実は、中小企業でも内部統制システムの導入を積極的に推奨しています。ここでは、中小企業が導入する3つのメリットと導入する際の2つのポイントに焦点を当てて、詳しく解説していきます。

導入する3つのメリット

中小企業が内部統制システムを導入した際に得ることができるメリットは主に3つあります。

取引先に安心感を与えられる

中小企業が内部統制システムを導入することで、取引先に対して大きな安心感を与えることができます。これは、内部統制システムが企業の透明性と信頼性を高めるからです。特に中小企業は、大企業のような豊富な実績をまだ築けていない場合が多いです。しかし、内部統制システムをしっかりと構築することで、自社の業務が透明かつ効率的に行われていることを証明できます。これにより、取引先や新規顧客に対して、実績の少なさを補う信頼性を確立し、ビジネスチャンスを広げることができます。内部統制システムの整備は、中小企業の成長を後押しする重要な要素と言えるでしょう。

企業価値が上がる

中小企業が内部統制システムを導入すると、企業価値が向上するという大きなメリットがあります。

内部統制システムが整備されていることは、企業が健全な経営を行っていることの証となります。投資家にとっては、企業の透明性と信頼性が向上したと評価され、投資意欲が高まります。また、内部統制システムの導入は、企業が従業員を大切にし、働きやすい環境を整えようとしていることの証です。従業員のモチベーションが向上し、生産性や創造性が向上することで、企業の競争力強化に繋がります。大企業よりも規模が少ない中小企業にとって、人員の確保はとても重要なことなので、従業員のモチベーション向上は必要不可欠と言えるでしょう。

内部統制システムの導入は、中小企業にとって単なるコスト削減や業務効率化だけでなく、企業全体の価値向上に繋がる重要な投資です。投資家や取引先からの信頼獲得、従業員のモチベーション向上、リスク管理の強化など、様々なメリットをもたらし、企業の持続的な成長を後押しします。

従業員の負担が軽減できる

中小企業において、内部統制システムを導入することで、従業員の負担を軽減できるという大きなメリットがあります。

内部統制システムを構築する過程で、業務プロセスが明確化されます。これにより、業務手順が可視化され、従業員は自分の担当業務を正確に把握できるようになり、迷いや重複作業が減少します。また、各業務の標準作業手順書を作成し、マニュアル化することで、従業員はマニュアルに沿って業務を進めることができ、業務の習得時間が短縮されます。特に中小企業では限られた人数の中で業務をおこなわなくてはならないため、明確なマニュアルがあるかどうかで効率的な業務が遂行できるかが変わってきます。単にマニュアル作成をするのではなく、明確なマニュアル化を作成・実行することでビジネス効果が期待でき、従業員の業務負担を軽減し、働きやすい環境を実現することができるのです。

特に中小企業にとっては、従業員一人ひとりの役割が大きいことが多いため、業務効率化やミス防止は大きな課題です。内部統制システムの導入は、従業員の負担を軽減し、働きがいを高めることで、人材の定着率向上にも繋がるでしょう。

導入する際の2つのポイント

中小企業が内部統制システムを導入する際の覚えておくべき2つのポイントを紹介していきます。

重要なリスクに絞ってコントロール

中小企業が内部統制システムを導入する際、「重要なリスクに絞ってコントロールする」という考え方は非常に重要です。全てのリスクを完全に排除することは現実的ではありません。そこで、企業にとって最も大きな影響を与える可能性のあるリスクに焦点を当て、効果的な対策を講じる必要があります。というのも、人的・物的リソースが必ずしも十分ではない中小企業にとってすべてのリスクを回避するのは困難と言えます。そこで、発生する可能性のあるリスクを洗い出し、その影響度と発生確率を評価することで、リスクの発生確率や影響度を低減することができます。従業員、顧客、取引先など、様々なステークホルダーの意見を聞き、彼らが重要と考えるリスクを把握。過去のトラブル事例を分析し、同様の事態が発生する可能性のあるリスクを特定することで、リスクを完全に回避することも可能となるのです。

中小企業が内部統制システムを導入する際は、全てのリスクに対応しようとするのではなく、企業にとって最も重要なリスクに絞って対策を講じることが重要です。経営資源の無駄遣いを防ぎ、効率的なリスク管理を実現していきましょう。

企業にあった効率的なツールの活用

「企業に合った効率的なツールの活用」は非常に重要です。人員や知識不足が多いとされている中小企業は「業務の効率化」はビジネスをおこなう上で最も重要なことです。その業務効率化を最大限に活かせる方法が「効率的なツールを導入すること」が挙げられます。

情報の一元管理することで情報を一瞬で把握することができ、意思決定のスピードが向上します。意思決定が速ければ、すぐに実行に移すことができます。また、データ入力エラーを減らし、データの正確性を高めることも可能です。自社の状況に合わせて最適なツールを選ぶことで中小企業のビジネス向上に大きな影響を与えてくれる重要な要素です。ツールを効果的に活用することで、内部統制を強化し、企業全体の効率化を図ることができるでしょう。

まとめ

内部統制システムは、企業が正常に業務を遂行する重要な役割を担ってくれます。それは、大企業や上昇企業にとどまらず、中小企業にも大きな影響を与えてくれる欠かせない存在となります。内部統制システムの明確な重要性を知って、今後の企業にぜひ役立ててみてください。企業を守る、そして発展に繋がる礎となるでしょう。

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クラウドERP導入ガイド編集部
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