ERP導入ガイド!成功するための10箇条、事例を紹介

 クラウドERP導入ガイド編集部

ERPの導入は、業務効率化や経営改革を実現するために、今後ますます重要視されます。しかし、導入プロジェクトは大規模かつ複雑であり、成功させるコツとして綿密な計画と適切な進め方が必要です。実際、「ERP導入で期待した成果を得られなかった」企業は少なくありません。ERPを導入する前に、成功に導く10箇条や実際の導入事例、得られるメリットや注意点などを理解しておきましょう。

ERPを導入する一般的な目的とは?

企業がERP(Enterprise Resources Planning=企業資源計画または統合基幹業務システム)を導入する理由には、時代の流れや経営の課題に対応するためのさまざまな目的があります。

主な導入理由としては、経営資源の統合による経営の合理化が挙げられます。これまで各部門に独立していた情報や業務フローをひとつのシステムに集約することで、各部門間の連携がシームレスになり、業務の重複や無駄を削減することが可能です。例えば、在庫管理や生産計画、販売データなどの一元管理により、経営全体の効率化を目指せます。

また、ERPを導入すると、企業全体のデータをリアルタイムで可視化できるため、経営陣は正確な情報に基づいて、即時に判断を下せるようになります。データの一元管理により、意思決定のスピードが向上すれば、競争が激しい市場環境でも順応できます。複数拠点を持つ企業でも、各拠点の状況を正確に把握し、戦略の統一性を高められる点もメリットです。

ERP導入によって得られること

ERPを導入すると、情報の一元管理や業務効率の改善を通じて、さらなる柔軟な経営を実現できます。また、コスト削減や意思決定の迅速化など、現代の競争が激しいビジネス環境に必要な取り組みを支援する効果もあります。

データドリブン経営の実現

第一に挙げられるのは、企業内のすべての情報を一元管理できる点です。これまで各部門で管理されていたデータを集約し、必要な情報を即時に可視化できる環境が整備されるため、データに基づく意思決定、いわゆる「データドリブン経営」の実現につながります。また、データがリアルタイムで共有されることで、意思決定の迅速化も図れます。例えば、販売実績や在庫情報を即時に確認すれば、適切な販売戦略の策定がスムーズです。

業務プロセスの改善

シームレスな各部門間のデータ連携は、業務プロセスの見直しと改善につながります。特に、決算業務の効率化がその代表例です。以前は、各部門で管理されていたデータを集約し、それらを手作業で統合する必要がありました。しかし、ERPの活用によって、これらのプロセスが自動化され、手間やミスの大幅な削減が可能です。

業務の効率化

業務プロセスの改善は、さらなる業務効率化が期待できます。例えば、急な注文対応があった場合、以前では在庫確認や生産ラインのスケジュール調整など、多くの業務が発生していました。しかし、ERPの導入により、これらの情報が統合され、リアルタイムでシームレスな各部門間の連携が可能です。業務全体が効率的に回るようになれば、企業全体の競争力強化にもつながります。

システムの運用コスト削減

これまで経理部門では会計システム、営業部門では販売管理システムなど、それぞれ独立したシステムを運用している企業が多く見られました。ERPを導入することで、これらのシステムを一元化できるため、運用・保守費用の削減が実現します。また、個別のシステムを管理していた情報システム部門のリソースの最適化により、人件費削減にも効果的です。

経営リスクの低減

個別に稼働していたシステムを統合し、リスク管理がより包括的になる点もERPの特徴です。例えば、各部門で独立したシステムを利用している場合、各システムそれぞれのセキュリティ対策を講じる必要があります。

各システムのセキュリティ強度が異なると、ひとつの脆弱性が穴となり、サイバー攻撃の影響が広範囲に及ぶリスクが高まります。しかし、ERPに統合すれば、全社的に統一されたセキュリティ対策が実施されるので、このようなリスクの低減が可能です。

また、災害や緊急時の事業継続計画(BCP)対策としても、ERPを活用できます。例えば、自社の建物や設備が災害に遭った場合、クラウド型ERPにより基幹システムを保護し、データの損失を防ぐため、事業再開を早められます。

ガバナンスの強化

ガバナンスの強化は、企業の信頼性向上にもつながります。株主や顧客、取引先からの信頼を得るためには、適切な内部の運営を示すことが重要です。

ERPでは、部門間で共有されるデータが改ざんされる可能性が減り、重要な情報が常に正確な状態で保持されます。また、監視機能により、従業員がコンプライアンスを遵守しているかどうかを把握しやすくなります。例えば、従業員の操作ログを記録・分析することで、不正行為や業務上のミスなどの早期発見が可能です。このような機能を活用すれば、経営者や管理者が心置きなく業務を運営できる環境が整います。

ERP導入時に押さえておきたい注意点

ここでは、導入時に押さえておきたいポイントを四つ紹介します。

導入コスト

ERP導入における、最初の大きな課題はコストです。

クラウド型の場合は、ライセンス料や月額利用料などが一般的にかかりますが、これらは初期費用を抑えられる代わりに、運用期間が長くなるほどコストが蓄積する可能性があります。したがって、導入前に必要なライセンス数を慎重に見極め、無駄のない計画を立てることが重要です。

一方、オンプレミス型の場合は、サーバー構築費やシステム開発費が発生し、初期費用が高くなりがちです。ただし、クラウド型と比較して、長期的な運用コストを抑えられる場合もあるため、自社の規模やニーズ、求める機能に応じて選択しなければなりません。

業務プロセスの見直し

ERPは、業務プロセスの標準化を目的としたシステムであるため、導入時には既存の業務を見直し、システムに合わせることが求められます。

この考え方は「Fit To Standard」と呼ばれ、これを前提として、既存の業務に大きな変更が加わる可能性も考慮しなければなりません。短期的に見ると従業員が慣れない業務に直面し、不満や混乱が生じることがありますが、長期的に見ると効率化や業務品質の向上が期待できます。

導入を成功させるためには、現場の従業員にERPの意義を理解してもらい、変化への適応を支援する取り組みが必要です。特に、業務プロセスの変更が従業員の負担にならないよう、移行期間中のサポート体制を整えておくことをおすすめします。

データの選定・整理

これまで各部門がそれぞれ独立したシステムを利用していた場合、当然データの形式や管理ルールは異なるため、統合前のデータの選定・整理が欠かせません。例えば、重複データの排除やデータ形式の統一が挙げられますが、これには相応の時間とリソースがかかります。

また、ERPに移行した後のデータ入力のルール策定も重要です。システムに不適切なデータが入力されないように、明確なルールを設けて、従業員にその内容を周知します。この準備を怠ると、導入後の運用が円滑に進まない可能性があるので、慎重に計画を立てましょう。

従業員に対する教育

ERP導入後の運用を円滑に進めるためには、従業員への教育が求められます。特に、運用に関する知識と、セキュリティに関するリテラシーの向上が必要です。万が一、漏えいが発生した場合、その影響は多大なものとなりかねません。したがって、安全な運用の実現には、従業員一人ひとりがセキュリティ意識を持つことが大前提です。定期的な研修やトレーニングを実施し、ERPを正しく利用するスキルを習得させることで、リスクを最小限に抑えられます。

また、運用マニュアルの整備や問い合わせ窓口の設置など、従業員がシステムを利用しやすい環境を整えることも教育のひとつです。

ERP導入は失敗しやすい?その理由とは

ERP導入時のよくある失敗のひとつに、既存の業務プロセスを見直さずに、ERPを導入するケースが挙げられます。例えば、「Fit&Gap」アプローチで、既存の業務に合わない部分をアドオン開発で補おうとした結果、ERPの標準機能を十分に生かせず、カスタマイズが増え、コストや時間が膨らむことがあります。

また、プロジェクトの目的が曖昧なまま進行することも、失敗の要因です。明確な目標や計画がない場合、プロジェクトの迷走により、スケジュールの遅延やコストの肥大化を引き起こし、結果的に業務効率化や経営改善を達成できません。ERP導入プロジェクトが「成功確率は約3分の1」と言われるほど難関なのは、これが理由です。

より確実に成功させるためには、機能の実現だけを優先するのではなく、導入の目的や課題を明確にし、全社的な視点でプロジェクトを進めることが重要です。

ERP導入のコツ!成功に導く10箇条

例えば、SAP社のユーザーコミュニティ「JSUG」が2002年にまとめた「ERP導入の10箇条」は、成功に導くための具体的なポイントを示しています。この10箇条を参考にしながら、プロジェクトの計画や実行に役立つ知見を整理することをおすすめします。

【1.導入の目的・目標を明確にすること】
ERP導入の理由を明確にし、達成すべき目標の具体化が重要です。これがプロジェクトの指針となります。

【2.トップダウンでプロジェクトを進めること】
経営トップの強力なリーダーシップが欠かせません。経営層が積極的に関与することで、全社的な協力体制が整います。

【3.プロジェクトメンバーの選出に留意すること】
将来の業務プロセスを構築する、中心的な役割を担うメンバーの選抜が求められます。

【4.経験豊富なコンサルタントを利用すること】
ERP導入の専門知識を持つコンサルタントの活用により、プロジェクトの成功確率が高まります。

【5.コンサルタントの役割を明確にすること】
外部支援を最大限に活用するために、コンサルタントの役割や責任範囲を明確に定めます。

【6.ペーパーレスを徹底すること】
システム導入を機に業務のデジタル化を進め、無駄を排除します。

【7.導入後も教育・指導を継続すること】
適切なシステムの活用には、導入後も従業員への教育を継続することが重要です。

【8.システムに過度な期待をしないこと】
ERPは万能ではないため、システムに期待しすぎず、業務改革の一環として捉えることが大切です。

【9.業務革新を推進すること】
ERPを単なるシステムとしてではなく、業務革新のインフラとして活用します。

【10.導入効果を早く出せる施策を考えること】
短期的な成果を意識し、導入初期における成功体験を積み重ねていきます。

これらのポイントの多くは、ERP導入の検討段階において、特に重要視されるものです。

出典:「事例から学ぶ~SAP導入による企業の基幹システムの刷新」(著:Japan SAP Users’ Group2002年)
SAP導入・活用10のポイント~JSUG:ユーザー会導入経験者の意見~

ERP導入の要、「検討フェーズ」における3つのポイント

ERPの導入を成功させるためには、検討段階における綿密な計画と準備が求められます。

経営視点での導入目的・検討方針の策定

まず重要なのは、経営視点での導入目的と検討方針を明確にすることです。ERP導入の背景や目的が曖昧なまま進めると、具体的な効果が見えにくくなり、プロジェクトが迷走する要因となります。「なぜやるのか」「何を目指すのか」「どのように実現するのか」「いつまでに実現するのか」など、基本的な問いに答える形で方針を策定する必要があります。

例えば、「なぜやるのか」については、売上目標やコスト削減など、定量的な経営目標を掲げることが効果的です。また、「何を目指すのか」については、経営情報管理の高度化や業務プロセスの標準化などの具体的なビジョンを描きます。この際、経営課題に直結する具体的な粒度で課題を整理しておくと、プロジェクトの方向性がぶれにくくなるのでおすすめです。

実現方法の確認

目的や方針が明確になったら、その実現方法を具体的に検討します。この際、従来型のシステム導入アプローチを踏襲しないことがポイントです。旧来の「As-IsBase(現状重視)」の考え方ではなく、ERPの標準的な業務プロセスを活用した「Fit To Standard」のアプローチを採用しましょう。

例えば、スクラッチ開発でシステムを構築する場合、既存の業務をそのまま新システムに載せ替えるだけでは、根本的な改善にはつながりません。一方で、ERPのパッケージに定義された業務プロセスを活用すれば、それを基盤として新たな業務プロセスを設計しやすくなり、業務全体の効率化と標準化を実現できます。この方法を進める場合は、机上の計画だけではなく、ERPに含まれる具体的なプロセスを適宜確認しながら進めなければなりません。

検討体制の構築

最後に、部門横断的な検討体制の構築も重要です。ERP導入は、企業全体に影響を与えるプロジェクトであるため、経営企画部門やIT部門、各業務部門が一体となって進めます。また、経営層がプロジェクトに参画し、各場面における意思決定のサポートも検討すべきです。

特に、経営層の意思が反映されていない施策や、現場の業務部門の理解を欠いた施策は成功しない傾向があります。したがって、プロジェクトメンバーには将来像を描ける中核的な人材、いわゆる「エース従業員」の選抜が求められます。

また、このプロジェクトが今後の数十年間の企業基盤を支えるものであることを全従業員が理解し、長期的な視点で取り組むことが欠かせません。

経営層の参画によってERP導入が成功した事例

ERPの導入プロジェクトは、企業にとって大きな投資であり、成功するためには経営層の積極的な関与が重要なポイントです。特に、経営トップがリーダーシップを発揮し、導入目的や方針を明確にすることで、プロジェクトの方向性が統一され、全社的な取り組みが推進されます。経営層の参画がどのようにERP導入を成功に導いたか、導入企業の事例を知ることは大きなヒントになります。

マツモトプレシジョンの事例

福島県喜多方市に本社を構える「マツモトプレシジョン」は、精密機械部品加工を手掛ける中小企業です。自動車部品や空気圧制御部品の製造を主力事業としており、売上高は22億円に達しています。高度な技術を駆使して製品を生産する一方で、経営面では「各製品の原価を正確に把握することが難しい」という課題を抱えていました。

このような状況を打開し、経営の効率化を図るために選んだのが、「SAP ERP」の導入です。システムの活用により、生産実績データに基づいた電力使用状況の可視化を実現しました。さらに、製造過程で排出されるCO2(二酸化炭素)の量を算出できる仕組みを整え、環境負荷の削減にも取り組んでいます。

データを活用した経営改革の成果として、売上総利益率が30%改善し、営業利益率も3%向上しました。この成功を受けて、全従業員の基本給与を4%引き上げるなど、従業員への還元にも注力しています。

経営層の関わり方

ERP導入で成功を収めた背景には、経営層の積極的な関与がありました。同社のトップ層は、会社を作り直す覚悟でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、ERP導入に取り組んでいます。「売れ筋商品が明確でない」「製品別の原価が見えない」などの課題に危機感を抱き、自らフォーラムに参加して、ERPの重要性や最適な導入方法を学びました。

この結果、アドオン開発を避け、ERPの標準機能を活用する「Fit To Standard」方式での導入を決断し、導入期間とコストを削減しながら、経営改革を円滑に進められました。

ERPの導入で得られた成果

システムの標準機能を活用したことで、アドオン開発に頼らずコストを削減し、効率的なDXを実現したほか、生産品目を12,000点から2,000点に絞り込むことで、管理工数を大幅に削減し、利益率の向上を達成しています。

また、生産工程の電力使用状況やCO2排出量を可視化し、環境負荷の低減にも取り組みました。このように、ERPにおける業務の一元管理により、生産管理や在庫管理、販売管理などの部門間の連携が強化され、「ムダ・ムリ・ムラ」の解消にもつながっています。

経営層のリーダーシップのもと推進されたERP導入は、短期的な業務改善だけではなく、長期的な競争力の向上や持続可能な経営基盤の構築にも成功を収めました。

オプテックスの事例

1979年に創業した「オプテックス」は、世界初の自動ドアセンサーを開発したセンサーメーカーです。各種センサー技術において世界トップクラスのシェアを持ち、現在では世界80か国以上で製品を展開しています。センサーの累計販売台数は3,000万台を超え、生活のさまざまな場面でその技術が活用されています。グローバル規模で事業を展開する中で、2008年時点の同社は複数の経営課題に直面していました。

事業拡大に伴い、各国や各部門に個別のシステムを構築した結果、各拠点間での情報共有が難しくなり、全体の業務状況を把握しにくい状態に陥っていました。この分散化したシステムは、企業全体の成長に必要な意思決定や経営管理を妨げる、大きな障壁と化していました。さらに、リーマンショックの影響を受け、マーケティングを代理店任せにしていたことで、売上が激減してしまいます。

これらの課題解決を目指し、2つの重要な取り組みの同時進行を決断しました。ひとつは、グローバル規模での業務プロセスの標準化やシステムの一元化を目指す「守りのDX」、もうひとつは営業やマーケティングを自社で推進する「攻めのDX」です。この両面の取り組みを実現するために、「SAP S/4HANA」を選びました。

経営層の関わり方

ERP導入を成功に導いた背景には、経営層の強いリーダーシップがありました。リーマンショックによる経営危機をきっかけに、経営陣は自社の潜在的な課題に真正面から向き合いました。特に、各拠点に分散して稼働していたシステムを統一する必要性を強く感じ、デジタル化を推進するための基盤整備に注力しています。

経営陣の中には、ERP導入に対して懐疑的な意見を持つ者もいましたが、トップ層が費用対効果を丁寧に説明することで、合意形成を図りました。また、現場レベルでも、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の手間が大幅に削減されるなどの具体的なメリットを提示し、導入に向けた協力を得られました。

ERPの導入で得られた成果

まず、各拠点に分散していたシステムをSAP S/4HANAによって一元化したことで、業務プロセスの標準化と効率化が実現しました。このシステムは「1fact1place」の概念に基づき、データを1カ所に集約して、リアルタイムで共有できる仕組みを提供しています。

その結果、各拠点がこれまで表計算ソフトで作成していたデータをERPに入力するだけで、すべての関連システムに即時に反映されるようになりました。

また、ERPを活用したデジタル化により、経営状況をリアルタイムで可視化できる環境を整えられました。標準機能を活用する「Fit To Standard」のアプローチを採用したため、カスタマイズ開発のコストを抑えつつ、効率的な運用を実現させています。

赤城乳業の事例

「ガリガリ君」で有名な「赤城乳業」は、中堅のアイスクリームメーカーとして知られています。7~8月に売上がピークを迎え、その後急激に落ち込む季節性が大きな特徴です。

季節に左右される事業特性を持つことから、過剰生産による倉庫維持費の増大や、冷夏などによる販売量減少のリスクを抱えており、これらが赤字や廃棄コストの要因になることも少なくありません。この課題に対応するため、PSI(生産・販売・在庫)管理の最適化が不可欠とされてきました。

このような背景をもとに、「赤城ITグランドデザイン」を策定し、デジタル化への取り組みを開始しました。当初、SAP ERPについては高額なコストが懸念されましたが、最終的には情報の一元化とデータドリブン経営の実現が決定的な要因となり、SAP ERPの導入を決断します。

経営層の関わり方

ERP導入プロジェクトは、IT部門のリーダーが旗振り役となって推進されました。経営層だけではなく、開発本部や営業本部、生産本部、管理本部などの主要部門の協力を得ながら、全社を巻き込んだ取り組みへと広がっていきます。

部門間での比較評価を依頼することで、各部門の視点から見たシステムの利点を確認し、導入に対する納得感を醸成しました。このような全社的な協力体制の構築が、プロジェクトの成功につながっています。

ERPの導入で得られた成果

まず、不動在庫を削減できた結果、在庫管理コストが大幅に抑えられました。また、業務プロセスの抜本的な改革(BPR)とITシステムの刷新を実現し、これまで分散していたデータが一元管理される環境を作り上げました。

PSIの最適化により、過剰生産を抑えつつ、需要変動に順応できる仕組みを構築しています。単品ごとの原価管理が強化されたことで、原価をリアルタイムで把握できるようになり、経営判断が迅速化しました。月次処理の自動化においても、標準原価が常に可視化できる状態を保ちつつ、業務効率化と正確性の向上にも成功しています。

さらに特筆すべき点として、SAP ERPに対する「使いにくい」「大企業向け」「コストが高い」「失敗リスクがある」などのイメージや懸念を払拭し、その実用性を高く評価しています。システム間のデータ転記に起因するヒューマンエラーやデータの不整合が改善され、リアルタイムな意思決定が可能になったことが、その信頼を高めました。

はじめてのERPなら「GROW with SAP」

ERP導入を検討する際、選択肢のひとつとして注目されているものが「GROW with SAP」です。SAPは、ほぼすべての業務領域を網羅した、世界No.1のERPプロバイダーとして知られていますが、その機能性は大企業向けと思われることがよくあります。しかし、実際にはSAPERPを利用している企業の約8割が中小企業であり、GROW with SAPはそのニーズに特化したシステム設計です。

SAP ERPの強みは会計や財務管理だけではなく、生産や販売、在庫管理、購買、人事管理など、企業の業務全般を統合的に管理できる点です。他のERP製品では、会計機能のみを含むものも多く見られますが、SAPはこれにとどまらず、ほぼすべての業務領域をカバーします。

さらに、SAPはオンプレミス型からクラウド型へと進化しており、クラウドならではの利便性を生かしたGROW with SAPが提供されています。このSaaS型ERPパッケージは最新の技術を採用し、中堅・中小企業が迅速かつ確実に経営革新を進められるように設計されています。クラウド型であるため、常に最新バージョンにアップデートされ、企業の成長や変化に対して順応できる点も特徴です。

GROW with SAPは導入プロセスがシンプルでありながら、豊富なパラメータ設定を備えています。例えば、海外店舗の有無や特定の業務プロセスの要否に応じて、柔軟なカスタマイズが可能です。

また、ERPに詳しい専門家が参画しなくても、直感的な設定で業務プロセスを効率化させるアドバイスが提供されるため、はじめてのERP導入でも心置きなく利用できます。

まとめ

ERPは単なるシステム導入ではなく、業務改革そのものです。成功させるためには、計画段階における目的や目標の明確化、適切なシステム選定、経営層のリーダーシップ、運用後の継続的な改善などが求められます。

SAPは世界No.1のERPプロバイダーとして、企業規模を問わず、さまざまな業務領域を網羅したソリューションを提供しています。特にGROW with SAPなどの製品は、中堅・中小企業でも短期間で導入が可能です。SAPのERPを活用すれば、データドリブン経営やグローバルな業務の標準化を実現し、企業の成長を力強く後押しします。SAPを選択肢に加え、成功事例に学んだ成果を自社でも実現してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人
クラウドERP導入ガイド編集部
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