INFORで進化する製造業のデジタルトランスフォーメーション

 クラウドERP導入ガイド編集部

「INFOR」とは、会社名であると同時に、INFOR社が提供する基幹システム管理アプリケーションの総称です。製造業がINFORを導入することで、業務効率の向上はもちろん、DXの主要な目的である新たなビジネスモデルの構築や付加価値の向上を実現することが可能になります。本記事では、INFORの概要やDXへの貢献理由を詳しく解説するとともに、DX対応に役立つINFORのおすすめパッケージやERP選定のポイントについてもご紹介します。

INFORとは?

INFORは、製造業や流通業をはじめとする企業向けに、基幹業務(製造、販売、人事、財務など)の管理システムを提供するアメリカの企業です。また、同社が開発した一連のアプリケーション群も「INFOR」と呼ばれています。2002年の創業以来、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)関連のアプリケーションやアナリティクスツールを数多く提供しており、20年以上にわたる業務実績を誇ります。さらに、2023年にはIT分野のリサーチで著名なGartner社から、その成長性やビジョンの実行力が高く評価されています。

INFORのERPは特に製造業や流通業に特化しており、175か国以上、6万社以上の企業で導入されています。この広範な利用実績から、INFORが信頼されるグローバルブランドであることがわかります。

参照元:INFOR企業情報
URL:https://www.infor.com/ja-jp/about

ERPとしてのINFORの強み

INFORのERPには、他のシステムにはない独自の強みがいくつかあります。
まず、データ連携のしやすさが挙げられます。INFORのシステムは、顧客が自社だけでなく、サプライヤーや周辺のITベンダーが持つデータを効率的に集約できるよう設計されています。この特性により、例えばESG(環境・社会・ガバナンス)レポートの作成も容易になります。

次に、柔軟な拡張性が特徴です。顧客のビジネス形態に合わせてシステムを拡張でき、異なるアプリケーションとの連携をスムーズに行えるため、導入後の準備時間やプロセス上の障壁を大幅に軽減します。これにより、ビジネスの変化にも迅速に対応可能です。

さらに、可視化機能を備えたダッシュボードもINFORの強みです。このダッシュボードは、ビジネスプロセス全体を一目で把握できるよう設計されており、時間や人員などの管理を容易にします。これにより、業務効率を向上させるだけでなく、プロセス自体の最適化も可能です。

DX化社会におけるERPアプリケーションの必要性

DX(Digital Transformation)は、デジタル技術を活用してビジネスを変革する取り組みです。その進化は大きく3つの段階を経て進みます。まず、第1段階でアナログ情報をデジタル化し、第2段階ではデータを活用して業務効率を改善します。そして最終的に、第3段階で新たなビジネスモデルの構築や付加価値の創出へと発展します。

しかし、現実には多くの企業が第1段階をクリアしたものの、第2段階で足踏みしてしまうことが少なくありません。その原因は、データがアプリケーション単位や部署単位で管理され、社内全体で共有・活用できていない点にあります。こうした「データの断絶」がDX推進の大きな障壁となっています。

この課題を解決する鍵となるのが、情報を一元化できるERPアプリケーションです。ERPを導入することで、分散したデータを統合し、リアルタイムで活用可能な状態に整えられます。これにより、業務全体の透明性が向上し、効率化を図れます。

特に、DX化をスムーズに進めるためには、高性能なERPを選ぶことが重要で、なかでも、INFORは柔軟な拡張性や優れたデータ連携機能を持つERPソリューションを提供しており、DX推進の強力なサポート役です。

DX化社会対応に役立つINFORのおすすめパッケージ

INFORは多数のパッケージを提供しており、自社の業務や業態を考慮して使い分けることで、成果が得られやすくなります。そこでこの項目では、INFORが提供しているパッケージの用途や特長を個別に紹介します。

Infor M3

Infor M3は、流通業や製造業、食品・飲料、ファッション、化学業界など、多様な業界のニーズを反映して開発されたERPパッケージです。業界特有の要件を考慮しながら、企業が自社の独自性や競争優位性を維持できるよう設計されています。このパッケージは、製造や販売、在庫管理、購買、会計など、多岐にわたる業務を効率化する豊富な機能を備えています。また、パラメータを変更することで柔軟にカスタマイズでき、企業ごとの個別ニーズに対応可能です。

グローバル化が進む現代に対応し、Infor M3は多言語・多通貨に対応しているため、世界各地に拠点を持つ企業でも利用しやすい設計となっています。また、各業界のデータを分析しやすい仕組みが備わっており、必要に応じて洞察を得ることも可能です。さらに、AIを活用した自動化機能が搭載されており、作業負担を軽減し、マンパワーの削減にも貢献します。

導入時には必要なモジュールを選択できるため、不要な機能にコストや手間をかける心配がありません。さらに、UIの使いやすさや画面のパーソナライズが容易に行えるなど、使用者の利便性にも細やかな配慮が施されています。

Infor LN

Infor LNは、製造業に特化したERPパッケージで、オペレーションの効率化に大きく貢献します。業務や財務の構造をモデル化することで、取引の計画立案や管理を支援し、複数の言語や通貨に対応しているため、海外拠点を持つグローバル企業でも利用しやすい設計となっています。
主要な機能としては、データ分析によるトレンドの把握やインサイトの生成、需要に応じたサプライチェーンの最適化、プロジェクトやサービスのライフサイクル管理、無駄を削減し効率化を図る品質管理などが挙げられます。

例えば、数年単位で進行する建設プロジェクトにおいては、コストや進捗、リソース配分を可視化し、最適化を実現します。また、業界に適したベストプラクティスをもとに、財務の可視化を行うことで経営効率の向上にも寄与します。

さらに、Infor LNは柔軟性の高いモジュール式ソリューションを採用しており、見込み生産、受注生産、受注構成、受注設計といった多様な生産方式に個別対応が可能です。複数の生産方式にも同時対応できるため、さまざまな業務環境に適応するERPとして注目されています。

Infor SyteLine

Infor SyteLineは、製造業向けに設計されたERPソリューションで、製造・販売・流通をはじめ、経理や人事などのバックオフィス業務まで、製造業全体の管理を自動化・簡略化することをサポートします。自動車産業や産業用品製造業、航空・宇宙、防衛関連の企業など、幅広い業界での利用が想定されています。

このソリューションは、受注生産、見込み生産、繰り返し生産、個別受注生産など、さまざまな生産スタイルに対応可能で、生産体制のハイブリッド化にも柔軟に対応します。また、多言語・多通貨対応だけでなく、各国の商習慣や法規制にも対応しているため、グローバル展開を行う企業にも適しています。実際、Infor SyteLineは世界中の多くの企業で導入されており、その実績は高く評価されています。

さらに、分析機能も充実しており、売掛金や元帳、売上や在庫、作業能率、経営パフォーマンス、製品納品率、納期遵守率、製品の売上貢献度など、多岐にわたる項目をカバーしています。これにより、企業は業務状況を詳細に把握し、戦略的な意思決定を行いやすくなります。

Infor Birst

Infor Birstは、人工知能(AI)を搭載したクラウド型BI(Business Intelligence)ソリューションです。このソリューションはERPとは異なり、企業のデータ収集、分析、結果の可視化を行い、経営の意思決定を支援するツールです。

Infor Birstは業界特有のデータモデルに対応した高度なアナリティクスを提供します。AIを活用することで、データ検索やレポート作成が容易になり、リアルタイムでの経営分析が可能です。これにより、コストの最適化や収益性の向上を実現するだけでなく、グローバル企業特有の管理の課題も軽減できます。また、特定業務に関連するユーザーの活動を追跡する機能も備えています。

経営者から現場担当者まで、あらゆるポジションで有効な分析が可能で、モバイル端末からのアクセスにも対応しているため、出先でも必要な情報を手軽に取得できます。さらに、ITの専門知識が少ないユーザーでも直感的に操作できる設計が特徴で、使いやすいダッシュボードやレポート作成のサポート機能を通じて、生産性の向上に寄与します。加えて、UI(ユーザーインターフェース)のカスタマイズが柔軟に行える点もInfor Birstの大きな魅力です。

Infor Nexus

Infor Nexusは、サプライヤーチェーン業務の無駄や非効率な部分を解消するための管理用プラットフォームです。サプライヤーやメーカーのほか金融機関などの関係企業や組織をつなぎ、サプライチェーンを可視化し、必要な連携をスムーズにします。この機能は関係者や関係機関のつながりを強化することにも寄与します。

また、自社製品の需給バランスをリアルタイムに把握できるため、異常の兆候を検知してシグナルを発したり、潜在的なトラブルへの予測アラートを出したりすることが可能です。さらに、収集したデータや財務状況、顧客の指標をもとに問題対処の優先順位を決める機能を備えています。

加えて、コンテキストに沿った意思決定を支援する機能や、出荷や在庫状況のリアルタイム確認、グローバル輸送の管理機能も搭載しています、これらの機能は、海外展開を行う企業にとっても大きなメリットをもたらします。なお、Infor NexusはERPではありませんが、サプライチェーン管理を専門とした強力なプラットフォームとして、企業の業務全体を効率化する重要な役割を果たします。

ERPアプリケーションの選び方

ERPアプリケーションは多数存在しており、それぞれに特徴があります。ERPアプリケーションを選ぶ際に何に着目すべきか、ポイントを解説します。

データの見える化が可能か

ERPアプリケーションを選ぶ上で重要な要素のひとつが「見える化」です。見える化で注意すべきなのは、必要な情報を一目で確認できること、データが適切に統合されていることです。例えば適切なERPの導入ができていない企業では、部門ごとにそれぞれデータ管理をしていることで不整合やタイムラグが発生しやすく、二重入力の手間もあります。一方、十分な見える化ができるERPを導入すれば、不要な入力の無駄を削減でき、さらにリアルタイムで意思決定に必要な情報を得ることで、即時の行動が可能です。

変化対応力に優れているか

近年は急激なグローバル化やAI技術の発展などもあり、ビジネスシーンでも目まぐるしい変化が起こっています。また、社会情勢や業界の変化に対応するために、業態や組織を変更する企業など、M&Aの影響を受ける可能性もあります。そのため、データの管理や意思決定の材料となるERPも、継続的なバージョンアップで変化に対応できるものを選ぶべきです。ほかにも、グローバル展開への対応力があることや、業務形態の変化に対応可能で業務プロセスが統括できるシステムであること、サプライヤーとの連携が容易なことなどに着目しましょう。

適切に標準化されたプロセスを提供しているか

前述した「見える化」と「変化対応力」を実現するには、適切に「標準化」できることが重要です。ERPの標準化を求めるのであれば、業界ごとに必要な知識や商習慣、法を踏まえているか、多言語、多通貨に対応できるか、導入に伴い開発を必要としない程度の業務が網羅されているかなどに着目してください。また、継続的なアップデートによって標準化が保たれるアプリケーションを導入することも重要です。

まとめ

ERPは企業が必要とする情報を一元化し、業務の効率化やDX推進を支える重要なシステムです。しかし、導入するERPによって得られる効果は異なるため、自社の課題や目標に合ったアプリケーションを選ぶことが成功の鍵となります。ERPを選ぶ際には、機能性や拡張性だけでなく、自社の業務プロセスやDX化の目的にどの程度適合するかを意識して比較検討することが重要です。また、複数の選択肢を検討することで、自社に最適なソリューションを見つけやすくなります。本記事で紹介したポイントを参考に、比較を通じて最適なERPを導入し、企業としての成長基盤を整えてください。

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