地球温暖化などが深刻化する現在、世界的に高い関心を集めているのがサスティナビリティ経営です。本記事ではサスティナビリティ経営とは何か、またなぜ注目されているのかを解説し、関連する用語、取り組むメリットや取り組み際の注意点についても詳しく紹介します。
サスティナビリティ(sustainability:持続可能性)経営とは、環境・社会・経済の3つの観点から持続可能な企業活動を行うことです。サスティナビリティ経営では、資源の浪費や温室効果ガスによる環境汚染などを防ぎ、先の世代まで地球環境を継続的に保全しながら、良好な経済活動を営めることを目指します。さらに、貧困や難民問題、労働問題といった社会的課題の解決・解消にも取り組みます。自社の利益だけでなく、地球全体のことを考え、長期的な視点に基づいた経済活動を行うことが、サスティナビリティ経営の特徴です。
ビジネスなどで使われる場合、サステナブル(sustainable)とサスティナビリティ(sustainability)とには若干ニュアンスの違いがあるようです。「sustainability」は持続可能な状態を指す名詞で、「サスティナビリティ経営」も実際に環境問題などに取り組んでいる経営というニュアンスがあります。一方「sustainable」は形容詞で、「sustainability」に比べるとそれが達成できているというニュアンスは弱くなります。「サステナブル経営」は「サスティナビリティ経営」より、概念的な表現として使われることが多いようです。
現在、世界では人口の爆発的増加や貧困、難民問題、森林伐採やエネルギー資源の枯渇、環境汚染などさまざまな課題が存在しています。
特に地球温暖化は深刻で、年々気温が上昇しているだけでなく、異常気象による自然災害の激甚化を実感している人も多いでしょう。自然災害により生活の基盤が破壊されれば、企業活動そのものが行えなくなるおそれもあります。そのため、利益と持続可能な環境を両立できるサスティナビリティ経営への関心が高まっている次第です。
このような状況に対して、国連は以前から「持続可能な開発」という概念を提唱してきました。2015年には国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、気候変動など17の目標について世界各国が2030年までの達成を目指しています。
また、国連は投資家に対しても、環境や社会に対する企業の取り組みを評価に含める「責任投資原則(ESG投資)」を呼びかけています。そうした国連の動きも、サスティナビリティ経営が注目を集める要因のひとつです。
サスティナビリティ経営は、環境・社会・経済の3つの観点からの配慮が軸となっています。その際、評価の基準として採用できるもののひとつに「GRIスタンダード」があります。
「GRI」とは「Global Reporting Initiative(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)」の略称で、社会の持続可能性における国際基準を策定するための独立組織です。各々の企業の判断では客観的な評価が行えないため、統一性のある国際的な基準を設けるべく、1997年にアメリカのボストンで設立されました。現在はオランダのアムステルダムに拠点を置いています。
GRIが、サスティナビリティ報告のための国際ガイドラインとして作成したのが、GRIスタンダードで、大きく「共通スタンダード」「セクター別のスタンダード」「項目別のスタンダード」に分かれています。中でも項目別のスタンダードは、環境・社会・経済の3つで構成されており、それぞれで取り組むべきテーマについて細かく設定されています。
・原材料
・エネルギー
・水と廃水
・生物多様性
・大気への排出
・廃棄物
・環境コンプライアンス
・サプライヤーの環境面のアセスメント
参照元:「GRIスタンダード日本語版」
(URL:https://www.globalreporting.org/how-to-use-the-gri-standards/gri-standards-japanese-translations/)
・雇用
・労使関係
・労働安全衛生
・研修と教育
・ダイバーシティと機会均等
・非差別
・結社の自由と団体交渉
・児童労働
・強制労働
・保安慣行
・先住民族の権利
・人権アセスメント
・地域コミュニティ
・サプライヤーの社会面のアセスメント
・公共政策
・顧客の安全衛生
・マーケティングとラベリング
・顧客プライバシー
・社会経済面のコンプライアンス
参照元:「GRIスタンダード日本語版」
(URL:https://www.globalreporting.org/how-to-use-the-gri-standards/gri-standards-japanese-translations/)
・経済パフォーマンス
・地域経済でのプレゼンス
・間接的な経済的インパクト
・調達慣行
・腐敗防止
・反競争的行為
・税金
参照元:「GRIスタンダード日本語版」
(URL:https://www.globalreporting.org/how-to-use-the-gri-standards/gri-standards-japanese-translations/)
GRIスタンダードでは、これらについて報告要求事項を定めています。
サスティナビリティ経営の知識を深めるにあたっては、さまざまな専門用語も知っておくとよいでしょう。以下にサスティナビリティ経営において頻出する3つの用語を解説します。
ESGとは、「環境(Environment)」「社会(Society)」「ガバナンス(Governance)」の、3つの頭文字を取った言葉です。これら3つの要素は持続可能性を測る上で重要な観点であり、それを考慮した企業経営や投資を表現する際にESGがよく登場します。
例えばESGを考慮し、持続可能な社会への取り組みを行っている企業に対する投資は「ESG投資」と呼ばれます。また環境や社会への配慮に加え、管理体制(ガバナンス)の構築により持続可能な発展へと導く経営方針を「ESG経営」といいます。
「CSR」とは、「Corporate Social Responsibility」の略で、日本語に訳すと「企業の社会的責任」です。
CSRの具体例としては、地域へのイベントの参加や美化活動、寄付といった社会貢献のほか、ステークホルダーとの良好な関係構築などが挙げられます。その中に持続可能な企業活動を目指すサスティナビリティ経営も含まれます。
SDGsは、サスティナビリティ経営と非常に関連性の高い用語です。「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。SDGsはサスティナビリティを実現するため、2015年の国連サミットで採択された国際的な開発目標であり、具体的には以下の17の項目を2030年までに実現することを目指しています。
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsは環境・社会・経済を含めた世界のさまざまな課題の解決を目指すための目標です。
引用元:国際連合広報センター「SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは? 17の目標ごとの説明、事実と数字」
(URL:https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/31737/)
日本のSDGsの現状や課題について解説します。
帝国データバンクが2024年に行った「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」では、SDGsに積極的に取り組んでいる企業の割合は54.5%にも上りました。加えて、積極的に取り組む企業の約7割が効果を実感しているといいます。
積極的に取り組む理由としては、人材確保や取引先との関係強化を挙げる企業が多くなっています。株式会社ディスコが2021年に行った「就活生の企業選びとSDGsに関する調査」では、「企業のSDGsへの積極的な取り組みが志望度に影響する」と答えた学生は、全体の約4割にも上っています(内訳:「とても影響する(志望度が上がる)」7.3%、「やや影響する(志望度がやや上がる)」33.9%)。
また、一般財団法人日本立地センターが2021年に発表した「2020年度中小企業のSDGs認知度・実態等調査」によると、中小企業で「SDGsの検討・取り組みを始める際の最も大きな判断要素」が「取引先企業からの提案・要請」と答えたのは19.5%でした。これは最も多い「代表取締役(回答者)の判断」に次いで2番目に多い回答です。
参照元:帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」
(URL:https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20240725.php)
参照元:株式会社ディスコ「就活生の企業選びとSDGsに関する調査」
(URL:https://www.career-tasu.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/09/sdgsshu_202108.pdf)
※P4をご参照ください。
参照元:一般財団法人日本立地センター「2020年度中小企業のSDGs認知度・実態等調査」
(URL:https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/sdgs/data/2_02_2020fy_tyusyokigyou_sdgsnintidochousa.pdf)
※P3をご参照ください。
SDGsに取り組む日本企業は年々増加しているものの、課題もあります。先述した帝国データバンクの「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」において、SDGsに積極的に取り組む企業の割合を規模別で比較すると、大企業ではSDGsに積極的な企業が71.8%と高い割合に上りました。
一方、中小企業では51.2%に留まり、小規模企業に限定すると42.9%まで割合が下がりました。これを見ると、企業の規模が小さくなるほど、SDGsに積極的に取り組む企業の割合が減ることがわかります。
SDGsの世間での認知度は上がりましたが、中小企業では人材面やコスト面で余裕がないなどの理由で、取り組みが進んでいないところも少なくありません。SDGsが日本企業全体で推進されるには、中小企業がどのようにSDGsを進めていくかが課題になります。
参照元:帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」
(URL:https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20240725.php)
企業がサスティナビリティ経営に取り組むと、さまざまなメリットがあります。
近年サスティナビリティやSDGsに対する世間の認知度が高まっています。サスティナビリティ経営に積極的に取り組んでいると社内外にアピールすることは、ブランドイメージや企業価値の向上につながります。
特に現在、さまざまな商品やサービスのユーザー・消費者の中心となっている90年代~2000年代初頭のZ世代は、サスティナビリティの概念やSDGsなどに関心が高い傾向があります。そうした世代が購買層である企業は特に、サスティナビリティ経営に取り組むことで高いメリットが見込めます。
企業が環境問題の改善などに積極的に取り組むことで、そこで働く従業員も自身の労働の社会的意義が感じられ、モチベーションが高まります。社会貢献を行っている企業の従業員であることに、自信や誇りも持てるでしょう。
さらに、サスティナビリティ経営には、ジェンダー格差是正や働き方改革といった、社会的な課題の解決に取り組むことも含まれます。職場環境が働きやすく改善されることでも、従業員満足度の向上につながります。
先述の株式会社ディスコの調査(「就活生の企業選びとSDGsに関する調査」)でもわかるように、近年の学生は企業を評価する基準として、企業の規模や売上高だけでなく、社会的な貢献度も重視しています。
現在、採用人材の中心となっているのは、先述したZ世代です。サスティナビリティ経営に積極的に取り組むことは、人材確保での優位性につながります。
学生や転職志望者から選ばれる企業には優秀な人材も集まりやすいので、長期的に見るとさらなる企業の成長も期待できるでしょう。
ESG投資への注目度が高まっていることからもわかるように、近年投資家が投資先を選ぶ際は、環境や社会への取り組みも考慮することが多くなっています。サスティナビリティ経営に取り組む企業は評価が高くなるため、資金調達も行いやすくなりがちです。
日本でも「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」などはESG投資を積極的に推進しています。今後はこうした企業が増えると予想され、資金調達の優位性も高まっていくと考えられます。
社会的課題解決への取り組みは、これまでの取引先や顧客とは異なるステークホルダーとのつながりを生み出します。地域社会や地方自治体、異業種の企業など、種々の接点が増えることで、新たなビジネスチャンスにつながるかもしれません。
現在でも、サスティナビリティ経営に取り組む企業が地方自治体などと協力し、環境関連のイベントなどを開催している例は数多くあります。また、環境負荷を減らす技術やシステムの開発により、新たな販路や売上を創出できる可能性もあります。
これまでサスティナビリティ経営のメリットを取り上げてきましたが、一方で課題や注意点もあります。その中でも主な4つのポイントについて詳しく解説します。
サスティナビリティ経営に取り組むことは、これまでの業務内容やプロセスの見直しにつながります。また、原料やサプライチェーンを変更するといった配慮が必要になる可能性もあります。
それにより原料や物流のコストが上がったり、プロセスの変更により労働時間が増え人件費がかさんだりする場合があります。長期的には利益が見込めても、増大した事業コストにより現在の経営が悪化すれば、倒産のおそれもあります。費用が大幅に増加する場合は、得られるメリットとリスクをよく考慮した上で、一部分だけ取り組むなどの現実的な判断をしなければなりません。
サスティナビリティ経営では、場合によっては製品やサービスの価格、あるいは仕様の変更を伴うケースもあります。例えば、製品の原料を環境に配慮した素材に変えた場合、新しい原料が従来のものより高価であれば、製品の価格も上乗せされるでしょう。そうすると最悪の場合、取引先が契約を打ち切ってくる可能性もあります。
サスティナビリティ経営は長期的な利益につながる一方で、販売機会損失のリスクとも背中合わせです。現在の取引先の多くから理解を得られなければ、契約する取引先を見直さなければいけないかもしれません。
サスティナビリティ経営は、環境・社会・経済の3つの点に配慮し、持続可能な環境と利益の両立を目指す手法です。数値として短期的に結果が出るものではないため、中長期的な視点で取り組む必要があります。
先述したブランドイメージ向上や従業員満足度の向上、人材確保の優位性といったメリットは、数値などで可視化しやすいものではなく、また取り組んですぐに結果が現れるものでもありません。しかし、中長期的に見ると上記のようなメリットは企業の安定的な経営につながり、継続的に利益をもたらしてくれることが期待できます。
サスティナビリティ経営を推進していく過程で、場合によっては本業とかけ離れた分野での対応も候補に挙がってくることがあります。
例えば、製造業を営む工場が、自社で消費したエネルギーを再エネに置換するのは事業にも直結し、コスト削減にもつながります。しかし、そのために太陽光パネルの製造まで始めるとなると、本業にも直結せず、ノウハウがなければ莫大なコストと労力がかかります。あくまで本業の利益が適正に確保されることを前提に、余力のある範囲で取り組みましょう。
サスティナビリティ経営は、段階的に取り組むことでスムーズな実現が可能です。以下では、意識しておきたい3つのステップを詳しく解説します。
サスティナビリティ経営の導入は、経営層が主体となるトップダウン方式で行ったほうが効率的です。ボトムアップ方式の場合、方針や目標がまとまりづらく、スピード感をもって推進しにくい可能性があるからです。
導入のファーストステップとして、まずは経営層が、自社が取り組むべき社会課題の抽出を行います。課題を抽出する際は、自社の事業内容や経営方針と照らし合わせ、関連性が高いものを選びましょう。
課題が決まれば、それに対する中長期的な目標を設定し、従業員に理解を得られるよう丁寧に説明します。そうすることで経営層だけが先走るのではなく、全社的に目標への意識を共有できます。さらに社内だけでなく、株主や取引先、金融機関といったステークホルダーにも、サスティナビリティ経営への取り組みを始めることをコミットしておきましょう。
目標が設定できたら、次のステップとしてその実現のため、現状の可視化を行います。現状でどの程度目標とのギャップがあるかを把握することで、目標達成までの具体的な道筋を描きやすくなるからです。
例えば、脱酸素についての現状を把握するには、CO₂排出量を算出するほか、企業のESGへの取り組みを評価する「ESGスコア」を活用する方法もあります。こうした方法により、目標とのギャップを明確にすることで、将来的にどの程度CO₂排出量を減らせばいいかなどの具体的な目安がわかるようになります。
現状の課題が可視化できたら、どのような方法で目標を達成するのか、具体的なシナリオを策定します。
例えば脱炭素なら、特別な設備の導入を行うのか、製品の製法や製造プロセス、原料などを見直すことでCO₂排出量を減らすのかなども決めなければなりません。加えてどの程度排出量を削減するのか、具体的な数値目標もシナリオに落とし込む必要があります。
目標を設定する場合、最終的な目標だけでなく、中間目標も定めておくとよいでしょう。より近い将来での目標を設定することで、目標達成へのイメージが描きやすくなります。
ではここからは、実際にサスティナビリティ経営に取り組んでいる「マツモトプレシジョン」の事例をご紹介します。マツモトプレシジョンでは、DXの実現がサスティナビリティ経営につながったため、まずはDXの取り組みから紹介します。
マツモトプレシジョンは、自動車部品や空気圧制御部品などを製造する、精密機械部品加工メーカーです。1948年より80年近い歴史がある同社は、ものづくりにこだわり徹底した品質管理を貫いてきました。
しかし、製品の品質は良いものの、生産や販売、会計などのシステムが部署ごとに分断されており、生産現場では未だに表計算ソフトを手入力したり、手書き台帳を用いて購買や在庫の管理が行われていたりしたといいます。そのため製品ごとの原価や売れ筋商品の把握が困難で、適切な生産量の調整が行えていませんでした。
そこで同社はDXによる全社最適化を目指し、SAP ERPを導入しました。導入コスト削減のため、選択したのはFit to Standardの概念に基づく、アドオン開発なしのシステム導入です。
データドリブン経営により生産品目の整理が行えるようになったことで、管理対象は12,000点から2,000点にまで絞り込め、生産ロット数も見直しました。それにより管理工数が削減され、製品原価も可視化されたことで、利益率も向上しました。さらに企業の業績も改善し、売上総利益は30%、営業利益率は3%改善しています。売上や利益率が伸びたことで、従業員の給与アップも実現しました。
DXによってさまざまなデータを把握できるようになったマツモトプレシジョンが、次に取り組んでいるのがGX(グリーントランスフォーメーション)です。
GXとは、温室効果ガスの原因となる化石燃料への依存から脱却し、太陽光発電や風力発電といったクリーンなエネルギーへ移行する取り組みのことです。
同社では生産実績をもとに電力使用状況を可視化し、そこから製品の製造過程におけるCO₂排出量の算出を行いました。近年、世界の企業では製品やサービスの過程で排出される温室効果ガスを、CO₂量に換算して表示する「カーボンフットプリント(CFP)」が推進されています。マツモトプレシジョンの取り組みは、こうした世界の先進的な流れにいち早く対応するものです。
さらに同社は、工場建屋とカーポートの屋根にソーラーパネルを設置し、総消費電力の20%を自家発電で賄っています。加えて残りの80%を非化石証書付電力に転換することで、100%再エネだけで稼働できる工場を実現しました。こうしたGXへの取り組みは、いずれもDXの基盤があってこそのものです。
ERPは財務や会計などの業務データに加え、環境負荷やエネルギー消費量、労働安全性といった非財務データについても、一元管理が可能なツールです。一元管理することによりデータの透明性が保たれ、株主などステークホルダーへの開示情報やESG報告書の信頼度が高まります。
また、先述したマツモトプレシジョンの事例でもわかる通り、ERPで管理しているデータから、CO₂排出量やエネルギー使用量といった環境に関するデータを試算・収集することが可能です。それによりサスティナビリティ経営のための多様な施策について、スピード感をもって判断できるようになります。
さらには、ERPにはモニタリング機能に加え、エラーや不正、脅威などを検知する機能も備えたものが多く、他国とやり取りする場合も含めたリスク管理やコンプライアンス管理にも貢献します。
「SAP ERP」は、ドイツを本拠地とする世界的なソフトウェア企業「SAP社」によるERPソリューションです。SAP社ではERPと連携して非財務情報を可視化することで、サスティナビリティ経営を支援するソリューションも提供しています。それにより、自社の現状の課題や今後目指すべき目標などが的確に把握しやすくなり、迅速なサスティナビリティ経営を推進できます。
このほか、SAP ERPは世界各国で利用されているソリューションであり、多言語・多通貨対応だけでなく、世界の商慣習・法令への対応も可能です。海外との取引がある企業では、国をまたいだコンプライアンス管理にも役立てられるでしょう。
SAP Sustainability ソリューション
URL:https://www.sap.com/japan/products/sustainability.html
地球温暖化や環境問題、食糧危機といった社会的課題が深刻になっている昨今、環境などへの負担を減らしながら、持続可能な状態で企業活動を行うサスティナビリティ経営が注目を浴びています。
世界的にもSDGsなどへの関心が高まっている中、企業が一丸となってサスティナビリティ経営に取り組むことは、人材確保や企業のイメージ向上にもつながります。
サスティナビリティ経営を成功させるためには、現状の課題を的確に把握し、具体的に実現可能な目標を設定して、経営層がトップダウンで進めることが重要です。課題を把握するためには、生産量やCO₂排出量などさまざまなデータが必要になるところ、そこで役立つツールがERPです。
ERPを導入することで、財務データだけでなく非財務データも一元管理でき、サスティナビリティ経営のための施策に向けた迅速な判断が行えます。特にSAP社ではERPとの連携によりサスティナビリティ経営を支援するソリューションも提供しています。サスティナビリティ経営を効果的に推進したい企業の方は、ぜひ導入をご検討ください。